本殿が30年ぶりに美しく 西田中神社の修理完了

30年ぶりの保存修理が完了した羊宮神社㊧と八幡神社
30年ぶりの保存修理が完了した羊宮神社㊧と八幡神社

和歌山県紀の川市中井阪の西田中神社(三浦一起宮司)にある県指定文化財の本殿2社の保存修理が21日、完了した。30年ぶりに檜皮葺(ひわだぶき)の屋根を新調し彩色や塗装も補筆。華やかな外観を取り戻した。

境内には東側に八幡神社本殿、西側に羊宮神社本殿がある。それぞれが独立していたが1946年、羊宮神社の境内に同市尾崎の八幡神社、上野の妙見神社、下井阪の住吉神社が移され、社名が西田中神社と改められた。後に妙見神社と住吉神社は元の場所に移されている。

94年10月に完了した前回の修理では、銅板葺の屋根から従来の姿である檜皮葺に変更。その後、約30年が経過して屋根は劣化し、箱棟も傷んでいた。彩色や塗装にも劣化や剥離が生じてきたため、昨年11月上旬に修理に取りかかった。彩色の経年劣化を食い止めるために剥落止めを行い、完全に剥落した箇所は補筆。縁廻り高欄下と身舎内法長押下を中心に、在来の工法に倣って塗り直すなどした。県と市の補助を受けて行われ、総事業費は3873万円。

24日には一般を対象にした見学会が2回に分けて行われ、計約80人が参加した。主に、今回の工事の設計などに携わった県文化財センター文化財建造物課の寺本就一副主査(63)が神社の歴史や造りなどを解説し、西田中神社屋根等修繕工事委員会事務局の三谷好生さん(63)も説明した。

寺本副主査は、羊宮神社は室町時代後期から、八幡神社は江戸初期からあることなどを紹介し、国内でも珍しいシャチの彫刻が施されていることも話した。

参加した同市古和田の原佐都美さん(73)は「昔の人が造った立派な物が新しくなり、晴れやかで神々しい色合いで驚いた」と感動。寺本副主査は「神社に集まって祭りなども楽しみ、みんなで次の世代に守り継いでほしい」と願っていた。