塩はスイカの名脇役

主役の「スイカ」と脇役の「塩」
主役の「スイカ」と脇役の「塩」

メロンと並ぶ夏の風物詩であるスイカ。砂地を適地とするスイカは和歌山県内でも盛んに栽培され、近畿では兵庫県と並ぶ産地である。スイカを食する際に塩をかける方もいらっしゃるだろう。では、甘いスイカになぜ塩なのか。

塩をかける理由は、スイカの甘味を強く感じるため。人間の舌には味覚を感じる「味蕾(みらい)」があり、塩味・甘味・酸味・苦味・うま味を識別している。この5種類の味を「基本味」という。

一般的に食べ物は複数の基本味で構成されており、味の組み合わせにより、味の強みや弱みを感じる。スイカの魅力は豊富な水分とその中にある甘味であるが、この甘味をより一層引き立てるために有効であるのが、味に対比を与えること。

2種類の味を味蕾で同時に感じると、どちらかの味が引き立つというもので、これを「対比効果」という。一方の味が強く、他方の味が弱いときに起こる現象で、スイカに塩をかけすぎると塩味を強く感じる。スイカの甘味を引き立てるための名脇役として、塩が存在しているといえよう。

これは、甘いお汁粉に少量の塩を加えることと同じ。有塩のトマトジュースの方が無塩のものよりも甘く感じるのも、この対比効果が作用している。

塩の効果はスイカの甘味を引き立てるだけではない。日本食品標準成分表(2020年版)によると、スイカ100㌘あたりのカロリーは41㌔㌍と控えめながら、糖質は9・2㌘と適度に含まれる。エネルギー転換が早く血糖値の上昇を抑えながら水分を体内に吸収しやすいため、塩を同時に摂取することで、効率よく体内に塩分を補給することができ、熱中症予防の効果もある。

おいしく、健康に夏を乗り切るための先人の知恵がここにある。(次田尚弘/和歌山市)