有効成分が豊富な「柿の葉」
前号では、紀北と紀中で収穫期が異なる「八朔」の栽培について取り上げた。同じ県内であっても細かく見ていけば、地理的な条件によって、栽培される農作物に違いがある。
秋の深まりを感じ始めた11月中旬、紀北地域の農家から柿を譲ってもらった。段ボールに橙色が美しい柿の上に、果実を上回る立派な「柿の葉」が添えられていた。柿が生る農園を連想させ、産地直送の新鮮さを感じさせる粋な計らいである。
柿は一般的に、青果店では籠に盛られ、スーパーなどでは袋詰めにされることが一般的であり、葉が付いた状態で販売されることは少ない。しかし、年間を通して「柿の葉寿司」として目にする機会はある。今週は柿の葉の魅力に迫りたい。
柿の葉は、幅が10~12㌢、長さが16~19㌢程で手のひらを超えるサイズ。深い緑色をしており厚みもあるが、容易に折り曲げることができるほどのしなやかさもある。
魅力は葉に含まれる成分。ビタミンCが豊富に含まれ、100㌘あたり1・5㌘あり、これは果実1個に含まれる成分の約20倍に相当する量。柿の葉を使ったお茶が健康食品として販売されている理由の一つである。
ポリフェノールの含有量も多い。柿の果実にはポリフェノールの一種である「タンニン」が多く含まれる。抗酸化作用や抗炎症作用、血糖値を下げる効果があり、それらは柿の葉にも含まれる。昨今は、花粉症や糖尿病の予防・改善としての活用が注目されている。
いわゆる抗菌作用は、いにしえの人々にも認知され、地域の郷土料理である「柿の葉寿司」にも活用。和歌山県や奈良県の山間部など、海から離れた地域で代々親しまれる。さらに柿の葉の魅力に迫っていきたい。(次田尚弘/和歌山市)