「柿の葉寿司」の歴史と文化
![サバを使った「柿の葉寿司」](https://wakayamashimpo.co.jp/wp-content/uploads/2025/02/250209hb.jpg)
前号では、果実よりもビタミンCやポリフェノールなどの有効成分が多く含まれる「柿の葉」の魅力を取り上げた。柿の果実を購入するとき、葉を目にすることは少ないが、「柿の葉寿司」として触れる機会は多いもの。和歌山県紀北地方や奈良県の郷土料理として親しまれる柿の葉寿司の歴史を紹介したい。
柿の葉寿司が生まれたのは江戸時代中期のこと。発祥の経緯はさまざまな諸説がある。高い年貢に苦しむ和歌山県南部の漁師が熊野灘で取れたサバを塩で締め、奈良方面へ売り歩き、村々で行われる催事のごちそうとして定着したという説。あるいは、紀の川を使って運ばれたサバが上流の地域で、催事の際に食べられたという説がある。
いずれも、海から離れた地域におけるハレの日の食材として広まり、やがて、容易に手に入りかつ抗菌作用が期待できる柿の葉を使うことで、保存食になっていったとされる。発祥が和歌山県なのか奈良県なのか定かではないものの、山間地域の方々の知恵が集まった郷土料理であることに違いない。
和歌山県紀北地方や奈良県の名物として広く知られるが、日本各地にも存在。石川県加賀地方や鳥取県智頭地方にも存在。これらの地域ではブリやマスが使用される傾向にある。広げた柿の葉の上に寿し飯と魚の切り身を載せて巻くという作り方の基本は同じだが、太平洋側と日本海側で使用される魚が異なるなど地域性があり面白い。
サバを起点に始まった柿の葉寿司であるが、それぞれの地域の食文化によりそのバリエーションはさまざま。地域の特性や文化の違いで異なる味わいが楽しめる。ぜひ、いろいろな柿の葉寿司を食べ比べてみてほしい。(次田尚弘/和歌山市)