新たなハワイの食文化「ポケ」

ハワイで親しまれる「ポケ」
ハワイで親しまれる「ポケ」

前号では、百数十年前、和歌山県出身者がハワイに伝えた「ケンケン漁」が、現地の漁業振興に貢献したという歴史を取り上げた。ハワイといえば、ステーキをはじめとした肉料理のイメージが強いが、海の幸を使ったご当地ならではのグルメがある。今週はハワイで取れた新鮮な魚を使った料理「ポケ」を紹介したい。

ポケは魚介類の刺し身を小さなブロック状に切り、しょうゆをベースとしたタレで和えたものをライスの上に乗せた料理。ポケとはハワイの言葉で「小さく切る」を意味する。具材として主に用いられるのは、マグロやカツオ、サーモン、タコなど。

ポケの起源はアメリカ西海岸や日本・中国などのアジアからの移民が来るよりもはるか昔のこと。取った魚に塩や海藻、果実をすり込んだものが始まり。しょうゆが使われたのは、アジアからの移民がハワイに持ち込んだことがきっかけとされる。

筆者はホノルル市の北東部に位置するマノアという地域でポケを食した。硬めに炊かれたライスの上に、脂がのったマグロとカツオをベースとしたブロック状の刺し身が散りばめられている。その上に、小さく刻まれたノリ、青ネギ、オニオン、ゴマがしょうゆベースのタレで和えられ、さらに小粒のイクラと天かすが振りかけられている。

味は日本の海鮮丼と大差はないが、ライスが硬くパサパサしているからか、より魚介のうま味が感じられる。青ネギや天かすは日本人向けにアレンジされたものなのか、その真意は分からない。

共通して言えることは、ベースに使われているのはマグロやカツオ、そしてしょうゆの味付け。ケンケン漁がもたらした、新たなハワイの食文化と言って、過言ではなさそうだ。(次田尚弘/ホノルル)