箱根駅伝の人材育成語る 原晋さんが講演

箱根駅伝で青山学院大学を8回の総合優勝に導いている同大陸上部監督、原晋さん(58)が18日、日本生命保険相互会社和歌山支社(加賀伸正支社長)主催の講演会で和歌山市七番丁の和歌山城ホールを訪れ、「箱根駅伝から学ぶ人材育成術―より良い組織づくりがより良い人材を育てる」をテーマに語った。
会場には満席の約1000人が詰めかけ、加賀支社長のあいさつに続いて原さんが登壇した。
原さんは広島県出身。世羅高校で全国高校駅伝に出場、中京大学で全日本インカレ5000㍍3位などの実績を上げ、郷里の中国電力の陸上部創設に参加したが、故障に悩み、5年で競技から引退。同社で10年間サラリーマンとして働き、社内一の営業実績を挙げた後、2004年に青学大陸上部監督に就任した。
講演では、サラリーマン時代に学んだ「ゴールから逆算する発想」を挙げ、箱根駅伝の場合は1月2日に始まるレースに向け、クリアすべき目標、チーム内部での競争など「逆算で物語をつくり、学生にもきっちり伝えなければいけない。リーダーには言葉に落とし込む作業が必要」と述べた。
組織づくりにおいては理念の重要性を指摘し、青学大チームは「箱根駅伝を通じて社会に役立つ人材育成」との理念を掲げていることを紹介。人材に求められる社会の価値観は変化しており、かつては学力や記憶力などの認知能力が重視されていたが、気付く力、やり抜く力、人と関わる力などの非認知能力がより重視されるようになっているとし、理念を共有した上で、選手たちが自身の課題を把握し、自ら考え、判断する姿勢を身に付けるよう促していると強調した。
具体的な取り組みとして、チームでは月に1回、5~6人のグループで目標管理ミーティングを行い、目標と具体案を各自が発表し、他のメンバーがアドバイスや指摘を行い、結果は書き出して張り出し、チームで共有していることなどを明かした。
選手の指導においては「事実としてのダメ出しは必要」とした上で、良いことをしたら皆の前でたたえることを心がけており、「良い点に注目する組織の方が明るく、元気になる」と述べた。
聴衆との質疑応答もあり、最後のメッセージでは「失敗とは現状に甘んじて何もしないこと。輝く未来へ果敢にチャレンジする文化を、和歌山から発信しよう」と呼びかけた。