響き合う文化 万博で県とポルトガルが発信

互いの文化を発信し合おうと、和歌山県とポルトガル共和国は8日、開催中の大阪・関西万博のポルトガル共和国館で特別共催イベントを初めて実施。「農業と森の文化、ポルトガルと和歌山の対話」と題して、県産梅酒とポルトガルワインの試飲、パネル展示などを行った。

今回の企画は、互いの文化の共通点に気付いたことをきっかけに、偶発的に実現した。
県では、万博期間中に世界の国や地域とつながりを持ちたいと考えていたところ、ポルトガル館の展示で、同国で造るワインが世界文化遺産に登録されているのを知った。県職員が「みなべ・田辺の梅システムの世界農業遺産と共通するのではないか」と思い立ち、その後、ポルトガル共和国館のベルナルド・アマラル館長も和歌山ブースを訪問。熊野古道とサンティアゴ巡礼路、スギによる林業など、和歌山とポルトガルには共通点が多くあることから「ぜひコラボしましょう」と思いが一致した。
ポルトガル北部のアルト・ドウロワイン生産地域では段々畑で伝統的な農法で造られ、歴史的、文化的価値から2001年にユネスコの世界文化遺産に登録されている。
みなべ・田辺の梅システムは、薪炭林を残しつつ、山の斜面に梅林を設置することで水源涵養(かんよう)や崩落防止などの機能を持たせながら高品質な梅を生産する他、ニホンミツバチの利用や自然環境保全により豊かな農業生物多様性を維持していることが評価され、15年に世界農業遺産に認定されている。
イベントでは、両地域の取り組みやスギ間伐材利用の木製ガードレールなどを紹介した他、先着1000人に試飲が行われた。県内からは中野BC㈱(海南市)や㈱梅屋(田辺市)など5社の梅酒計10種、ポルトガルからはドロウ地方で造られる赤、白のワインなど6種が提供された。
原酒やゆず梅酒、ブランデー漬け、完熟と青梅を合わせた梅酒など個性豊かなラインアップが楽しめ、京都府と東京都から来た細江拓磨さん(24)と内田響一さん(23)は「梅といえば和歌山なのは有名で知っていたが、世界農業遺産だったことや、ポルトガルとの共通点が多いことは初めて知った。背景を知ると理解が深まり、より味わい深くなった」と話した。
試飲会前にアマラル館長と万博推進担当の中瀬雅夫参事があいさつし、アマラル館長は「万博は共有するものなので、場がつくれてうれしい」、中瀬参事は「ポルトガルの人が日本滞在中に熊野に来てほしい。イベントを機に両国の交流につながれば」と話した。
梅酒を試飲したアマラル館長は「梅酒は、ポルトガルのサワーチェリーのお酒『ジンジャ』とよく似ている。梅酒を飲むとホームに帰ってきたような感じがする」と笑顔だった。県知事室万博推進課の長谷川雄一主査は「偶然の引き合わせで実現した万博マジックです。『万博に和歌山あり』をアピールして和歌山の認知度を上げたい」と話した。