「二地域居住」の促進を 災害対策、都市と地方の課題解決に
近年注目を集めている「二地域居住」は、都市と地方に生活拠点を持ち、行き来しながら暮らすライフスタイルです。その推進には大きな社会的意義があります。第一に、都市部の過密化や地方の人口減少といった構造的な課題を緩和できる点です。都市住民は自然や広い住環境を得られ、地方は交流人口が増えることで経済や地域活動が活性化します。また近年はテレワークの普及によって仕事を都市に限定する必要が薄れ、ワーケーションなる概念も登場してきました。さらに災害対策の観点です。地震や豪雨、感染症などのリスクが高まる中で、複数の居住拠点を持つことは生活の継続性を高め、緊急時の避難先ともなります。このように二地域居住は豊かな暮らしを実現するだけでなく、社会全体の耐久力を高める取り組みとして重要です。
政府は6月に、二地域居住を含む地方創生に関わる骨太の方針を閣議決定しました。これをもとに予算要求が行われ、住民票を二つ登録できるアプリの整備費用が盛り込まれています。将来的にはマイナンバーカードとの紐付けも検討されています。また被災地では、東北、能登半島で二地域の住民票登録が進められており、その成果を全国に広げることが期待されています。これにより地域活性化や都市住民のウェルビーイング向上につながります。
かたや、地方では、第一次産業をはじめ多くの分野で労働力不足が深刻です。串本のロケット産業や熊本の半導体工場のように、高度人材を要する産業でも人材確保が課題となっています。加えて、DX化の遅れやドローンなど新しい輸送手段の活用も進んでいません。しかし地方こそ社会問題の解決に挑む「社会実験の場」としての役割が期待されます。総務省の「地域おこし協力隊」では、任期後に7割が地域に定住して課題解決に取り組んでいますが、一人や二人ではビジネスの立ち上げが難しく、さらなる人材確保が必要とされています。
このように二地域居住は、都市と地方双方の課題解決を担い、災害時の安全性を高め、地域の新たな魅力を育む取り組みです。和歌山で進む実践は全国的なモデルとなり、持続可能な社会づくりを支える重要な鍵となるでしょう。全国の自治体の皆さんもニ地域の住民登録をするインセンティブをどうやって向上させるか、二つの地域での行政サービスをどうするか、またその裏打ちとなる財源をどう確保するか。選挙権は?などについてプラットフォームを作り、毎日のように議論してくれています。私も二地域居住の実現のために議員連盟を立ち上げました。今後も活発に活動していきたいと思います。