特殊清掃、直葬同時に 孤独死増える社会で需要

「なるべくご遺族の意向に沿いたい」と、遺体専用の冷蔵庫をチェックする池内代表
「なるべくご遺族の意向に沿いたい」と、遺体専用の冷蔵庫をチェックする池内代表

全国的に高齢者の孤独死が問題視される中、和歌山県内で初めてウイルスや細菌などの遺伝子検査登録を取得した民間企業「池内興業合同会社」(和歌山市中之島、池内康二代表)が展開する「特殊清掃」と「直葬」を同時に申し込めるサービスが注目されている。

警察庁がことし4月に初めて統計を発表した「1年間に自宅で亡くなった一人暮らしの人」のデータによると、昨年に該当する人は全国で7万6020人に上った。そのうち和歌山県内は652人。いわゆる「孤立死」とされる死後8日以上たって見つかるケースも全国的に約3割を占めている。

元々「特殊清掃」や「家財・遺品整理」などの業務を営んでいる同社は昨年8月から「直葬・火葬」などのサービスも行っている。

従来であれば、孤独死(孤立死)した人を発見した身内や不動産管理会社、後見人は各種手続きに追われる。葬儀社への手配の他、臭いや痕跡などで物件が傷んでいるケースがほとんどで、特殊清掃業者への依頼も事実上必要となる。

これまで同社は年間約15件の特殊清掃の依頼を受けているが、ことしは7月現在ですでにその数字に届いている。また、特殊清掃と直葬をセットで申し込むケースも徐々に増えているといい、池内代表は「孤独死・孤立死の性質上、疎遠だったり、身寄りがなかったり。通常の葬儀でなく直葬にしたいというご遺族や後見人が多い」と話す。

同社には遺体専用の冷蔵庫もある。池内代表によると警察署に引き取られた遺体は長い期間預けられるわけではなく、葬儀社もほとんどの場合は棺にドライアイスで安置するため、時間がたつにつれて費用が高くつくという。「孤独死の場合は、ご遺族に連絡が遅れてどうしても葬儀までの時間がかかることもある。こういうケースにも寄り添っていきたい」と保管用冷蔵庫の導入を決めた。

特殊清掃と直葬を同時に申し込んだ遺族らは「急なことで、どうしていいか分からない時に一手に引き受けてくれて助かった」と安どの表情を浮かべたといい、超高齢者社会の現在、県内でもこうした事例が増えていくことも想定される。

池内代表は「生き別れで50年ぶりに会って顔も分からないというご遺族もおられた。孤独死は特殊なケースなので、できる限りご遺族の要望に応えられるようにするのも時代の流れだと思う」と話している。

「孤独死」初の統計 全国7万6020人

昨年1年間に自宅で亡くなった一人暮らしの人は全国で7万6020人。年代別では、65歳以上の高齢者が5万8044人と約8割を占める。死後8日以上経過して発見されたのは3割近くの2万1856人。和歌山県内は652人(うち高齢者529人)。