紡績工場跡地の「赤レンガ建築群」

複合施設を形成する「赤レンガ建築群」
複合施設を形成する「赤レンガ建築群」

前号では、淡路島の発展に貢献し、人と物の流れを支え、昭和41年(1966)に廃止された「淡路鉄道」を取り上げた。洲本市は製造業が盛ん。旧洲本駅のほど近くには、かつて紡績工場として使われた赤レンガ造りの建物が現存し、公共施設や飲食施設として活用されている。今週は、洲本市中心部に位置する、旧鐘紡洲本工場の「赤レンガ建築群」の歴史と今を紹介したい。

旧鐘紡洲本工場は明治33年(1900)に創業を開始。明治40年(1907)の洲本川の付け替え工事により生まれた広大な土地に工場群が建てられ、共同宿舎や女学校も併設。最盛期には12万台を超える紡績機が稼働し、洲本の近代化に大きく貢献した。

しかしオイルショックの影響などが重なり、段階的に規模が縮小され、昭和61年(1986)に紡績工場としての役目を終えた。

工場跡地を活用したまちづくりは平成7年(1995)から本格化し、市民図書館やレストランなどの施設として再利用。平成19年(2007)には経済産業省の「近代化産業遺産」に認定され、歴史的価値の高い建造物とされている。

令和3年(2021)、「食べる」「あそぶ」「楽しむ」「はたらく」をコンセプトとした複合施設「S BRICK(エスブリック)」がオープン。地域の食を味わえるゾーンや、天候にかかわらず子どもが遊べる室内広場、ものづくりができる工房、勉強や仕事に使えるコワーキングスペースや貸会場などがあり、市民のみならず市外から訪れる観光客にも人気のスポット。

海を通じた物流の要衝として栄えてきた洲本ならではのものづくりの文化は、今もこの地に根付き人と人を紡ぎ続けている。(次田尚弘/洲本市)