世界の頂上目指す ハンググライダーで名草さん

世界チャンピオンを目指す名草さん
世界チャンピオンを目指す名草さん

大空を自由に飛びたい――。幼い頃に描いた夢を持ち続け、和歌山県紀の川市を拠点に世界を舞台に活躍するハンググライダーパイロットの名草慧(あきら)さん(32)。ことし7月スペインで開催された世界選手権(クラス1)では世界の強豪と戦い、115人中26位で、日本人ではトップの好成績を収めた。「次は世界チャンピオンになる」と、名草さんは紀の川市の空で練習を重ねている。

ハンググライダーは、大きな翼で上昇気流を捉えて滑空するスカイスポーツ。世界選手権は隔年開催され、名草さんは3期連続日本代表として出場している。大会では100~200㌔のコースに設定された複数のポイントを回ってゴールするまでの速さを競う。

名草さんは大阪市出身。子どもの頃から空と雲が大好きで、中学生になると見ているだけでは飽き足りなくなり「飛びたい」という衝動に駆られるようになった。東大阪市の近畿大学経営学部に入学してすぐ紀の川市竹房のトノエアーハンググライダースクールに入門した。

同市はスカイスポーツのメッカで、打田エリアにある龍門山のテイクオフ基地「紀の川スカイパーク」は、絶景の紀の川平野を眼下に、通年フライトできる場所として多くの愛好者が集まる。

名草さんが初めて1人で飛んだのは穏やかな夕暮れ時。「500㍍の山から羽ばたくと、全身を包みこむような温かい風、眼下を見下ろすとリアルグーグルマップのような景色に感動した」と振り返り「上昇気流を使って雲の底1000~2000㍍まで上がり、上昇気流を乗り継いで何十キロ、何百キロ先まで飛んで行けると知り、ワクワクが止まらなかった」と話す。

飛べば飛ぶほど好きになる空。大学では10年間途絶えていたハンググライダーサークルを復活させ、数々の大会に出場。学生選手権では優勝を果たした。

卒業後はアルバイトをしながら競技を続け、2022年から24年は、トレーニングの拠点をメキシコに置き、ハンググライダーメーカーでテストフライトや製造、チューニングに携わりながら、練習に取り組んだ。

24年の春からナグエアーハンググライダースクールを開校し、生徒の育成に励みながら鍛錬する日々。約15㌔増の肉体改造し、繊細な操作技術と気象を読む判断能力を磨き、瞑想(めいそう)で精神面の安定性も強化している。

恩師である外村仁克(よしかつ)さん(72)と三千代さん(69)は「ハンググライダーには風を読む力、気象の知識、経験値と戦略が重要」とし、名草さんについて「習得が早く、始めて14年でここまで成長するのはすごい。必ず世界一になれると確信している」と話す。

「海と山、川が見える紀の川市の景色はどこよりも美しい」と名草さん。幼い頃に夢見た「空を飛ぶこと」を現実にし、紀の川市の空から世界の頂上を目指す。