「映える箱」で地域に活力 ワコンの段ボール人気

色鮮やかな段ボールを紹介する前垣部長㊧と西山康成営業係長
色鮮やかな段ボールを紹介する前垣部長㊧と西山康成営業係長

ワクワクする箱で感動を届けたい――。これまで機能性のみが重視されていた段ボールに、色鮮やかなデザインを施す「段ボール美粧サービス」を展開する和歌山県紀の川市中井阪で物流資材製造・販売を行うワコン㈱(西田耕平社長)。農家を中心に利用者が広がり始め、「映える箱」としてSNSで話題を集めている。

同社は1951年に和歌山市で和歌山梱包輸送㈱として創業。65年に打田町(現紀の川市)に移転。72年に分離独立してワコン段ボール㈱を設立。地域密着の段ボールメーカーとして、同市の農家や事業者などの輸送を支えてきた。長年物流に関わる中で、段ボールは輸送だけでなく、他でも価値を生み出せるのではないかと模索。送る側が伝えたい商品価値を段ボール箱に表現する印刷サービスを思い付いた。

同社BASE事業部の前垣安秀部長(38)によると、段ボールの原紙に直接プリントするのは非常に難しく、ベストな印刷環境を整えるために試行錯誤。刷っては捨てを繰り返し2年をかけ、その技術を完成させ、2020年からサービス提供を開始した。

同市でイチゴを生産販売する藤本農園まりひめ直売所の藤本智久さん(69)と葉子さん(65)夫妻は、客から「贈答用にしたいが、高級感のある箱はないのか」と聞かれることも多かったことから利用。「中身にこだわるだけでなく、箱で他との差別化を図りたい」と、絵本のようなタッチで、自然いっぱいの中で育つイチゴと、農園の風景が描かれた箱を制作。送られた人から「かわいい」と評判で「箱はすぐに捨てていたが、他のものを入れて大切に使っている」などと喜ばれているという。

有田川町の「みかんのみっちゃん農園」は、箱の4面でミカンが育つまでの農園の四季を描いている。

デザイン案を作るのは全国650軒以上の農家のブランディングやパッケージなどを手がける和歌山市の㈱はりまぜデザインの角田誠社長(47)。「何を消費者に伝えたいのか」と農家に要望を聞き、現場を訪れ、その魅力を絵にして作り上げる。

角田社長は「箱は生産者と消費者をつなぐ最強のコミュニケーションツール」とし、「コロナ禍からネットでの直販が増えている。生産者が他との差別化ができ、商品価値を高め、ブランディングにつながるツールとして今後需要が増えるのでは」と話す。

前垣部長は「何が届いたか開ける前からワクワクして記憶に残る箱を目指し、さまざまな要望に応えていく」とし、「段ボールの新たな使い方として、木目調の箱や、ごみ箱などさまざまな商品を企画している。箱で地域の力になりたい」と話している。