食味に優れた「但馬牛」の魅力

兵庫県産の和牛
兵庫県産の和牛

前号では、地産地消で食の魅力を発信するご当地バーガーの事例として「淡路島バーガー」を取り上げた。食材として使われる牛肉は淡路島で育てられたもの。「神戸牛」や「但馬牛」といった高級な精肉になる牛の多くが畜産されている。今週は淡路島で盛んな畜産と、和歌山県のブランド牛である「熊野牛」の関係を紹介したい。

淡路島は但馬牛の一大産地。神戸牛や特産松阪牛など世界的に名が知られた牛は、兵庫県内で生まれた但馬牛に限られている。淡路島と但馬地域の2カ所に家畜市場があり、その6割以上の子牛が淡路島で育てられている。兵庫県は他府県の和牛との交配を避ける唯一の地域で、そのこだわりがブランドの維持につながっている。

歴史は古く、鎌倉時代の末期(1310年ごろ)には淡路島で畜産が始まっていたとされる。海に囲まれミネラルが豊富に含まれる風が吹き、ストレスの少ない環境で育てられることがこの地域の魅力。

但馬牛は精肉の赤身部分のうまみ成分とされる「イノシン酸」と、霜降りと称され口溶けがよい「オレイン酸(モノ不飽和脂肪酸)」の含有量が、他府県の精肉と比べ割合が高く、それが口当たりの良い食味を実現。

和歌山県のブランド牛である「熊野牛」は、但馬牛を素に、かつてから熊野地域で農耕用として活躍した牛を改良し、和歌山県特産の黒毛和種として2021年にブランド化されたもの。但馬牛の特徴である赤身と脂のバランスに優れ、きめが細かで柔らかいという点は、熊野牛にも共通している。

熊野牛を育てる和歌山も淡路島と同様に牛を育てるうえで優れた環境。頭数は多くないが、スーパーの精肉売場でも目にする機会が増えた地域が誇るブランド牛。但馬牛をルーツに持つ熊野牛ならではの味わいを楽しんでほしい。(次田尚弘/洲本市)