小型パラボラ無償貸与 県教委と赤井工作所が宇宙教育協定

協定書を手に赤井社長㊨と今西教育長
協定書を手に赤井社長㊨と今西教育長

和歌山県教育委員会と㈱赤井工作所(岩出市根来)は25日、宇宙教育の推進を目的とする連携協定を締結した。同社が開発した小型パラボラアンテナを県立串本古座高校に無償貸与し、人工衛星から取得したデータを授業などに活用する。締結式で今西宏行県教育長は、県内高校が連携して人工衛星を製作し、カイロスロケットで打ち上げ、貸与のアンテナでデータを受信する将来構想を話し、協定により和歌山から宇宙人材を育成する体制がさらに前進する。

串本町でのカイロスロケットの挑戦に合わせ、串本古座高校には2024年度から「宇宙探究コース」を設置。協定に基づき同社は、直径3㍍のパラボラアンテナや操作に必要な電子機器など、超小型衛星地上局アンテナ一式を無償貸与。同校の校舎屋上に設置し、試験運用を経て、来年度から同コース生徒の授業や部活動に利用する。

人工衛星から得られる気象などのデータの分析や、アンテナを使って衛星の動きを追い、軌道を計算するなどの利用を想定しており、宇宙やデータ解析などに関する活動をしている他の県内高校とのデータ共有なども考えられている。

金属加工業の赤井工作所は、宇宙技術に詳しい和歌山大学の秋山演亮教授と連携し、同大に設置されているパラボラアンテナを製作した実績がある。

その後、超小型人工衛星を活用する動きが世界で加速し、地上局アンテナの低コスト化が求められる中、同社は、億単位の巨額を要する従来の大型アンテナではなく、超小型衛星に対応した安価で維持管理が容易な小型アンテナの開発を進めてきた。

貸与される小型パラボラアンテナ(赤井工作所提供)
貸与される小型パラボラアンテナ(赤井工作所提供)

今回貸与するアンテナは、衛星追尾の精度を高め、ソフトウェアの改善などを行った新型の第一号で、生徒が使いやすいよう、数値のデータだけでなく、画像の表示などもできる機能を追加した。

協定締結式は県庁南別館で行い、同社の赤井美隆社長と今西教育長が協定書に署名した。

今西教育長は、衛星データの分析が可能となることで、串本古座高校の宇宙教育や活動がさらに充実することを期待。同校と他の県内高校が連携して衛星を製作し、カイロスで打ち上げ、同校のアンテナで受信する構想については、「夢ではあるが、夢物語ではない。必ず実現したいと思っている」と意欲を示し、「この近い将来の夢に向かって、お借りするパラボラアンテナを末永く大切に使わせていただきたい」と感謝した。

赤井社長は「教育の現場で活用していただくことで、生徒の皆さんがより宇宙を身近に、自分ごととして感じてもらえればうれしく思う。産学官が連携し、和歌山から次の宇宙人材が育っていくことを心から期待している」と笑顔で話していた。