廃材に命を吹き込む 造形作家の石田真也さん

神様の顔の仮面を手に石田さん
神様の顔の仮面を手に石田さん

役目を終えて捨てられた家具、海岸に流れ着いた網や浮き――。人々に忘れ去られた「廃材」に新たな命を吹き込み、独自の芸術へと昇華させるアーティストがいる。和歌山県紀美野町で創作活動を行う造形作家、石田真也さん(41)。現在、白浜町のリゾートホテル川久内にあるミュージアムで「石田延命所 作品展」を開き、唯一無二の世界観が話題となっている。

同ミュージアムは、世界中の職人技が結集した「建築の宝石箱」と称される空間。石田さんは「異界」をテーマに、公園で撤去された滑り台などの遊具や、「モノ」に詰まった人の思いも作品に組み込み、再生させている。

「変容するものたち」
「変容するものたち」

展示作品の一つ、「変容するものたち」は、同ホテル内で使われなくなった古い備品、近隣の閉店した食堂ののれんやメニュー表、さらに石田さんの過去の作品で使用したパーツなどが用いられている。「いろいろな要素が合わさることで次の新しい形を見つけている」と話す通り、重なり合う歴史が新たな生命体のような造形を生み出した。

また、ステンドグラスの手法を用いた作品「変わらない光」は、空き缶のプルタブを散りばめ、中の光をミラーボールのように輝かせている。これら捨てられたモノたちが放つ異彩が、豪華絢爛(けんらん)な建築と共鳴し、見る者を日常から切り離された不思議な「異界」へといざなっている。

石田さんは和歌山市の「ぶらくり丁」生まれ。大学のテキスタイル学科で培われた素材への深い洞察が、現在の創作の土台となっている。独自のスタイルを確立する転機となったのは、約15年前のタイでの経験だった。現地の子どもに「どんな神様を信じているの?」と問われたことをきっかけに、身近な廃材で「神様の顔(仮面)」を作り始めたのが「廃材アート」の始まりとなった。

5年前に紀美野町へ移住し、合羽工場跡をアトリエとして漂流物などと向き合う日々を送る。「まずモノを集め、そこからイメージを膨らませていく過程に自分自身が一番ドキドキする」と石田さん。今後は国内のみならず海外での滞在制作も視野に入れ、その土地ならではの廃材を用いた表現を追求していくという。消費社会からこぼれ落ちたモノを「延命」させ、新たな価値を問い直す石田さんの挑戦は、これからも続く。

作品展は3月1日まで。午前10時半から午後6時(入場は5時半)まで。入場料は1000円。

詳細は同ミュージアム公式ホームページで確認できる。