「寅さん」に思いはせ 山田監督ら迎えシネマ演奏会

来場者に手を振る山田監督(左から3人目)ら
来場者に手を振る山田監督(左から3人目)ら

映画とコンサートが融合したシネマ演奏会「寅さんとオーケストラとわが街と」が11日、和歌山市の県民文化会館大ホールで開かれた。来場者はシリーズ50作目『男はつらいよお帰り寅さん』の上映と映像に合わせた生演奏や、オープニングテーマをはじめ、数々のマドンナのテーマ曲のオーケストラ演奏、俳優の倍賞千恵子さんによる歌や朗読、山田洋次監督(94)らのトークショーを楽しんだ。

『男はつらいよ』のような人情あふれる町の活気を、和歌山に取り戻そうと活動する市民団体「わかやま寅さん会」(西本三平代表)が主催。今回の演奏会は、山田監督からリクエストを受け、2年の構想を経て実現したもので、西本代表が「地域の力でやり遂げたい」と、和歌山市交響楽団に声をかけるなどして進めてきた。同シリーズの映画に、生演奏を合わせた披露は地方では初だという。

第1部の上映会のラストには、映像に合わせて同楽団が生演奏。第2部のオーケストラでは、同市のピアニスト、宮井愛子さんが演奏を担当し、同シリーズの音楽を手掛けた作曲家、山本直純さんの次男で指揮者の山本祐ノ介さんが指揮を務めた。 

演奏を聴いた山田監督は「ここまでのスケールにするのにどれだけ苦労されたか。皆さんの素晴らしい演奏は世界一です」と感激の様子。倍賞さんは「リハーサルからオーケストラと心が一つになっていった」とたたえた。

エピソードを話す山田監督
エピソードを話す山田監督

また、山田監督と倍賞さん、劇中で「満男」を演じた吉岡秀隆さん、俳優の北山雅康さん、照明技師で同市出身の土山正人さんらが舞台上に登場し、撮影秘話を披露。渥美清さん演じる「寅さん」の家族が、寅さんを人数に入れずにメロンを分け合って食べ、帰ってきた寅さんの分が無かったというシーンが話題に上り、山田監督は「リハーサルでどこか違う」と感じたと話した。このシーンは山田監督の子どもの頃の実体験を基にしたもので「少年の僕が夜にトイレに行こうと起きた時、両親と来客がケーキを食べていたのを見てしまった。疎外された感じがあった」と話した。

山田監督は渥美さんに、疎外された悲しみを表現してほしいと伝えると「分かりました」と答え、次に撮影すると「ピタッとはまった。渥美さんはすごい」と思い出を語った。

吉岡さんは、特急列車「くろしお」に乗り、和歌山城を見ながら来たといい「伯父さん(寅さん)、きょうは和歌山城辺りで商売しているんじゃないかなと思いながら来ました」と思いをはせ、会場は和やかな雰囲気に包まれた。

演奏会の最後には、山田監督や県内の中高生、来場者全員で「男はつらいよ」を合唱。山田監督は「僕たちの国が、文化を大事にする国であってほしい。音楽や映画、文学など、地方からの文化を国が応援していくことが大切だと、オーケストラを聴きながら思った」とメッセージを送った。

来場した50代の男性は「心がほっこりした。また1作目から見返したくなった。みんなで合唱したのも気持ちが一つになった気がした」と笑顔だった。