AIで地域に新たな風を 中村仁さんが加太で起業

「最先端の技術があるからこそ、地方で、和歌山でやれることがある」――。そんな思いを胸に、和歌山市の中村仁さん(28)が、加太にAI(人工知能)開発を主軸としたIT企業「Kaze(カゼ)」を設立した。目指すのは、和歌山での暮らしを充実させながら、ITを駆使して地域住民の困り事を解決すること。デジタルと地域社会を結ぶ新たなビジネスに期待がかかる。
大阪市出身。和歌山大学経済学部で地方創生について学ぶ中で、大らかな人間性や豊かな自然といった和歌山の魅力に強く引かれた。周囲の学生たちが東京や大阪での就職を目指す中、中村さんは「動画配信などのIT技術があれば、どこにいても娯楽は楽しめる」と、大学1年から和歌山での就職を希望。しかし、地方のIT企業が極めて少ないという壁に直面した。
2022年、東京のベンチャー企業に就職。自ら希望して和歌山支社を立ち上げ、技術責任者として15人規模へと成長させた。同市と包括連携を進めるなど、地方創生事業の最前線で尽力してきた。
「会社の制約に縛られず地域の人々に徹底的に寄り添いたい」との思いから、ことし4月に起業した。「加太はアクセスが良く、きれいなビーチや歴史的遺産がある。一方で空き家などの地域課題もあり、まだまだポテンシャルを生かし切れていない」として、「全ての暮らしにテクノロジーの風を」という願いを、会社名に込めた。
現在は、大阪でリモート勤務するスタッフと2人で運営。「AIを使いたいけれど何から始めればいいか分からない」という相談から土台作り、ペーパーレス化といったDX(デジタルトランスフォーメーション)支援、予約システム制作まで、顧客に寄り添う「伴走型」の幅広いサービスを展開する。さらに、役所の窓口で手続きを尋ねるように、サイト上のチャットで瞬時に情報が得られる「AIコンシェルジュ」も自社開発し、自治体への提案を進めている。
挑戦はビジネスにとどまらず、市内でごみ拾い活動を行う「クリーン&コネクト和歌山」の加太支部を設立した。ごみ拾いにも自社開発アプリ「クリーンヒーロー」を投入。拾ったごみを撮影すると、AIが種類や量を独自にランク付けして参加者の「頑張り」をゲーム感覚で評価する。同時に場所や数量などのデータも整理する。今月10日に加太海岸で行われた活動では、参加者から「ごみ拾いが楽しくなる」と好評だった。同日、さらに加太の魅力を周知しようと「歴史まち歩き」も実施した。
今後は「自社独自のプロダクトを開発していきたい」として、全国的に人手不足が喫緊の課題となる介護分野への展開を見据えている。中村さんは「AIを活用しDXを進めることで、現場の労働環境をより良くすることができる」と話し、「AIの大きな可能性をたくさんの人に知ってもらえたら。和歌山で横のつながりを大切にしながら、和歌山の人のちょっとした『手の届かない所』にテクノロジーを届けたい」と意気込んでいる。

