開校準備進むゴードンストウン 初代校長に聞く

英国の名門インターナショナルスクール「ゴードンストウン」の日本初の姉妹校「ゴードンストウン・ジャパン・ウエスト校」が、和歌山市梅原での2027年9月開校に向けて準備を進めている。同市を訪れた初代校長のナターシャ・デンジャーフィールド氏に、英国本校での歩みや全寮制の教育の特徴、和歌山への思い、新しい学校づくりへの展望などについて話を聞いた。
デンジャーフィールド氏は、英国スコットランドのゴードンストウン本校でハウスミストレス(寮母)や体育の教員、生徒のパストラルケア(心のケア)を担当する副校長などを歴任。その後、同じく英国の名門寄宿学校ウェストンバートの校長を13年間務め、ゴードンストウン初の日本校の初代校長に就任した。
教師と生徒の関係 創設者の理念実践
ゴードンストウン本校に着任したのは2003年のこと。イングランドの学校で勤務していたデンジャーフィールド氏を、本校の校長を務めていたマーク・パイパー氏が熱心に誘ったことがきっかけだった。
初めて訪れた本校のキャンパスは感銘深いものだった。海に近く、広々とした空間は緑豊かで、歴史を感じさせる寮などの建物が並んでいる。
生徒たちが学業をはじめさまざまなことに挑戦する姿、奉仕活動に携わる姿、お互いを尊重し、責任を持って行動する姿を目の当たりにし、創設者クルト・ハーンの理念が日々実践されていることを強く感じた。
ハーンの理念の中でも最も重要なものは、教師と生徒との「関係性」だとデンジャーフィールド氏は言う。パイパー氏に校舎を案内された際、印象深い会話があった。校舎の多くはかつて王立空軍が使っていた「ニッセン小屋」と呼ばれる建物。英国の多くの学校が校舎を新しくし、最新の施設を整えていた時期だったので、デンジャーフィールド氏は驚き、「こんな素晴らしい敷地で、教室に小屋を使っているとは思わなかった」と伝えると、パイパー氏は「大切なのは教師と生徒の関係であり、この小屋の中で何が起こるかであって、建物の見た目ではない」と答えた。「これは非常に重要なメッセージで、まさにクルト・ハーンがいつも語っていたことそのものでした」とデンジャーフィールド氏は振り返る。
寮は人格形成の場 専門チームがケア
ゴードンストウンでデンジャーフィールド氏が最初に担ったのは、寮を運営するハウスミストレス。卒業生であるチャールズ3世国王が在学中に過ごした寮で、60人の子どもたちを担当した。30年を超える教育者としてのキャリアの中で、最も充実感を覚えた仕事だったと話す。
寮生活は子どもたちにとって、いつも友達と一緒にいるようなもの。日々の行動を共にし、10代の難しい人間関係も一緒に乗り越えていくことになる。家にいるときのように、忘れ物がないかを親が確認してくれるようなこともない。「頼れるのは自分自身と友達、ハウスペアレント(寮母・寮父)だけです。自然と自立心を持ち、自分の責任で行動できるようになります。寮生活を経験した生徒は、同じ年齢の生徒と比べて、自立性がとても優れています」。
ハウスペアレントは、寮で生徒と生活を共にする。「良いハウスペアレントは、子ども一人ひとりと多くの時間を過ごし、その子のことを把握していきます。『あなたのことをちゃんと分かっているよ』という理解を示すと、子どもたちも同じように返してくれますし、子ども同士もお互いに理解や共感を示すようになっていきます。これは人格形成において非常に重要な意味を持っています」。
寮では毎週、「ハウス・ミーティング」が開かれる。生徒全員が同じ部屋に集まり、その週にあった良いことや、週末に何をするかなどを話し合う。菓子や飲み物を一緒に楽しみながら、年上の生徒たちが年下の生徒たちと並んで座り、きょうだいのような関係が育まれていく。
生徒たちと信頼関係を築き、成長の姿を間近で見られることは、ハウスペアレントとして大きな喜び。「助けを必要としている年下の生徒に、私が気づくよりも先に、年上の生徒が手を差し伸べている場面に出くわすことがあります。『この子たちは本当に成長したな』『家族としてようやくまとまってきたな』と深い感慨を覚えます」とデンジャーフィールド氏は笑みを浮かべる。
卒業時、生徒には生活の全てを共に経験してきた友人ができている。「一緒に成長し、時には失敗し、それを乗り越えて成功する体験を共有することで、強固な人間関係やネットワークができます。それは一生の財産になります。寮は、本当に特別な経験ができる場所なのです」。
日本校を運営する学校法人OCC(大阪市)の理事長でゴードンストウン・ジャパン代表の根岸正州氏は、日本の一般的な学生寮との違いを強調する。
日本では、寮母や寮長はたいてい管理人の役割で、寮生一人ひとりに目が行き届く数のスタッフはいない場合が多い。ゴードンストウンでは、ハウスペアレントの他に個別指導の教員、カウンセラー、メディカルスタッフ、課外活動スタッフなど専門性を持ったスタッフがチームを組んでおり、生徒の安全管理、生活や学びのサポートを担う。いわば寮は「第二の学校」と根岸氏は説明する。
開かれた学校へ 和歌山の一員に
和歌山市の日本校の敷地についてデンジャーフィールド氏は、スコットランド本校の周辺と共通する特徴を感じている。「学校の周りは自然に囲まれ、海も山もあり、屋外活動に適した空間がたくさんあります。この豊かな空間の中で、子どもたちはいろいろなものを見て、感じて、自分の中で内省するゆとりが生まれます。それは子どもたちにとって非常によい効果をもたらします」と、優れた環境に期待する。
生徒と教員が暮らすことになる日本、和歌山の文化について学び、地域の環境や特色を取り入れた教育プログラムも実施していきたい。
学校と和歌山の地域社会との関係づくりにも意欲を示し、音楽活動やスポーツなど、さまざまな活動を通じてキャンパスに地域の人々が訪れ、多様な体験ができる「開かれた学校」を目指す。
「新しい場所で、何か新しいことを始める時にいつも大切だと感じるのは、その地域のつながりです。和歌山に来て、非常に強いコミュニティーがあると感じました。その一員になれることを楽しみにしています」


