地域が生み出す「しらす」の魅力

前号では、夏の栄養補給を目的に手軽に作れる健康食である「ハモの吸い物」の作り方と効果について取り上げた。祇園祭を目前に控え、漁場である紀伊水道に面した漁港では、にぎわいを見せる。ハモの旬と前後の時期に県内各地でとれるのが「しらす」。通年にわたり漁が行われるが旬とされるのは春と秋。今週は県内におけるしらす漁とその特徴を紹介したい。
しらすは「カタクチイワシ」「マイワシ」「ウルメイワシ」などの稚魚を表し、一般的に生のしらすを釜ゆでしたものを「釜揚げしらす」、釜ゆで後に乾燥させたものを「ちりめん」という。県内では和歌山市から田辺市にかけての紀伊水道沖と新宮沖が主な漁場で、和歌浦湾、湯浅湾、田辺湾、新宮湾で盛んに水揚げされる。
しらす漁は網船2隻と運搬船1隻の計3隻を一つの船団とし漁を行うのが一般的。2隻の船で1時間から1時間半ほどかけてしらすを捕らえる。すぐに氷水を積んだ運搬船に載せ、新鮮なうちに港へ向かい水揚げする。その間に網船は再び漁を行い、戻った運搬船にしらすを積むという工程を何度も繰り返す。
農水省の統計(2023年)によると、漁獲量の第1位は兵庫県(1万5851㌧)、第2位は大阪府(5299㌧)、第3位は愛知県(4712㌧)と続き、和歌山県は第9位(1598㌧)。漁獲量が多いわけではないが、その味わいが高く評価される理由がある。
それは水揚げされる漁港近くに加工場が多く存在するため。水揚げ後すぐに加工場で釜ゆですることで、漁獲から加工までの時間が短く、ふっくらした仕上がりになる。温かいご飯にのせ、しらす丼などでいただくと格別な味わいになる。
鮮度が命のしらすを素早く加工することで、素材のうまみを引き立てる。地域ならではのしらす漁の魅力がここにある。(次田尚弘/和歌山市)

