吉宗奉納の名刀復元へ 刺田比古神社がクラファン

「光世」復元を呼びかける岡本禰宜
「光世」復元を呼びかける岡本禰宜

「岡の宮」の愛称で親しまれる和歌山市片岡町の刺田比古(さすたひこ)神社は13日、八代将軍・徳川吉宗から贈られた旧国宝の太刀「光世(みつよ)」を3D技術で復元するためのクラウドファンディング(CF)を開始した。同神社の岡本和宜禰宜(51)は「現物として残すことで、刀にまつわる歴史や人の思いを知ってもらいたい」と復元への協力を呼びかけている。また、17、18日の同神社の夏祭りで特別公開する。

同神社は和歌山城の守護神で1000年以上の歴史を誇る。吉宗誕生の折、厄を払った「拾い親の神社」としても知られ、将軍就任の際に吉宗が名刀「光世」を寄進した。

「光世」は平安時代後期、筑後国三池(現在の福岡県大牟田市)の伝説的刀工、三池典太光世(みいけでんたみつよ)が制作。光世は徳川家康公の愛刀の作者としても名高く、「光世」は1924年(大正13)に旧国宝(現在の重要文化財)に指定された。

45年(昭和20)7月9日の和歌山大空襲により、同神社の社殿や多くの宝物が焼失。焼け跡から奇跡的に中身の刀身だけが救い出されたが、ひずみや炭化で本来の刃の美しさを見ることはできなくなった。国宝指定も外され、同神社では「空襲の記憶をよみがえらせる負の遺産」として、公にせず秘蔵されてきた。

「吉宗公からの宝物を復元して将来に残したい」と、20年ほど前から岡本禰宜が復元に向け活動を始めた。実物の加工は断念せざるを得なかったが、紀美野町でレプリカを制作するアンフィ合同会社と県立博物館の協力の下、CFを活用して刀身と「さや」「つば」などの外装の本来の姿を3Dプリンターで復元する計画が立てられている。同神社と同時期に吉宗から太刀の寄進を受けた紀州東照宮など県内8社も、データ収集に協力する。

CFはプラットフォーム「レディーフォー」(https://readyfor.jp/)で実施中。9月10日までで目標金額は350万円。返礼品には、限定切り絵御朱印(1万円)や「光世」ミニチュア(5万円)、複製刀との記念撮影と実物刀身の閲覧(30万円)などがある。

13日の会見で実物が公開され、岡本禰宜は「戦争は大切に守ってきたものを一晩にして奪い去るが、戦争の記憶はどんどん薄れていく。物として残し、記憶を薄れさせてはいけない」と話した。

同神社は今回の復元の後、最終的には真剣の「写し」制作を見据えている。

太刀の公開は、17日が午後1~7時、18日は午前7時~午後9時。問い合わせは同神社(℡073・422・6576)。