外来カミキリを遮断 果樹農家の小倉さんが保護具開発

木を守る保護具を開発した小倉さん㊧と従業員の城本海人さん
木を守る保護具を開発した小倉さん㊧と従業員の城本海人さん

果樹を脅かす特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」の深刻な被害が全国で拡大する中、JAわかやま那賀支部のすもも部会長を務める紀の川市の果樹農家、小倉優一郎さん(41)が、樹木を物理的に保護する器具を独自開発し、7月27日に特許を出願した。薬剤の効果が限定的な中、折り紙の構造を応用した画期的な保護具で大切な果樹園を守るため、9月からクラウドファンディングを立ち上げ、実証実験の実現を目指す。

幹の根元を密閉して幼虫の侵入を確実に防ぐ
幹の根元を密閉して幼虫の侵入を確実に防ぐ

県内では同市の他、かつらぎ町や橋本市など紀北地域を中心に、クビアカツヤカミキリによる被害が急増。モモ、スモモ、ウメ、サクラなどのバラ科樹木が被害を受けている。成虫が木の根元などに産卵し、ふ化した幼虫が幹の内部に侵入して芯部を食い荒らすことで木を枯死させる。1匹の成虫が1度に卵を産み付ける数は数百個~1000個以上ともいわれ繁殖力が強く、一度侵入を許すと根絶が難しい。

県のまとめによると、ことし6月末時点の農地での被害は、かつらぎ町で6309本、橋本市で2135本、紀の川市で1570本に達し、深刻な状況。2019年にかつらぎ町で初確認されて以降、被害は中・南部へと急拡大し、県内17市町で確認されている。

また、岩出市や和歌山市でも農地だけでなく、公園や街路樹などのサクラで被害が相次いでおり、身近な生活圏にも脅威が迫っている。相次ぐ伐採や植え替えによる未収益期間における被害の発生は農家の深刻な経営負担となっており、紀の川市役所がことし6月から補助金対象を果樹以外にも拡大した他、国も7月末に対策本部を設置するなど対応に追われている。

小倉さんの農園でも24年から被害が顕在化。祖父から引き継いだ約30本のスモモの木のうち、9割が枯死し、残る大木はわずか2本に。

これまでも農薬散布などの対策はあったが、毎日の作業が必要で雨で成分が流れるなど持続性に難があった。捕獲した成虫の買い取り制度の提案も実現には至らず、小倉さんは既存の対策に限界を感じていた。

手塩にかけて育てたスモモの木が、次々と枯れ果てていく――。危機感を募らせた元高校の理科・生物教諭でもある小倉さんは「自ら動かなければ」と独自開発を決意。子ども向けイベントで接した、ねじりながら伸縮する円筒形の「折り紙の折り方(クレスリングパターン)」に着想を得て、幹の根元を物理的に覆う保護具の発案に至った。保護具はプラスチック製で、折り畳むことで幹の成長に合わせて径が広がり、5年から10年程度使用できる構造。産卵場所となる幹の根元を密閉して幼虫の侵入を確実に防ぐ。京都先端科学大学の協力を得て3Dプリンターで試作を重ねた。

9月からクラウドファンディングで開発費を募り、資金をもとに試作して地元の桃や梅農家に無料提供し、実証実験を進める。小倉さんは「これから何年も収穫を続けていくはずだった大切な木を何とか守りたい」とし「商売道具ではなく、深刻な被害からこの地域の自然や里山の環境そのものを守るための必須の対策として取り組んでいる。まずはこの実証実験を成功させ、農家の仲間たちと一緒にこの危機を乗り越えたい」と話している。

クビアカツヤカミキリの被害を受けた木
クビアカツヤカミキリの被害を受けた木