多様なアレンジも「めはり寿司」

高菜が詰まった「めはり寿司」
高菜が詰まった「めはり寿司」

前号では、「さんま寿司」の文化と歴史を取り上げた。紀南で親しまれる郷土料理といえば「めはり寿司」。今週はめはり寿司が生まれた背景と地域によって異なる具材のアレンジを紹介したい。

めはり寿司は山間部を中心に、作業の合間で簡単に食べられるものとして重宝される存在となり、この地域に広がった。塩漬けした高菜を使い大きなおにぎりを包む。「目を見張るほどにおいしい」という意味から「めはり」の名が付けられたという。

高菜は冬が旬の野菜。大きな葉が特徴で20㌢から60㌢ほどにまで成長する。日当たりが悪い土地でも育てやすいことから、平地が少ない地域での栽培に適している。

原産地は中央アジアとされ、日本で本格的に栽培されるようになったのは明治以降。中国から奈良県の試験場に種子を持ち込み、そこから近隣の和歌山県(主に新宮市)に加え、福岡県、山形県などで栽培されるようになった。地理的要因と種子が手に入るきっかけが相まって、紀南で高菜を使った郷土料理が生まれることになったといえよう。

高菜の調理方法としては、1月から2月ごろに収穫された葉を樽で塩漬けにする。それにより秋ごろまで葉を保存できるという。さらにこれを酢に漬け、丸く大きく握ったご飯に巻き付け、おにぎりにしていく。

特徴的であるのがご飯の具材。白米のままというケースもあるが、すし飯にしたり、麦を混ぜたり、刻んだ高菜の茎を混ぜたりとさまざま。しょうゆを付けた焼き魚や、甘辛く煮たシラウオ、かつお節、シラスなどを混ぜ込む地域もあり、狭い地域でありながらさまざまなアレンジがある。

手頃なサイズが主流となり、具材のアレンジにより多様な食べ方が楽しめるめはり寿司。後世に受け継いでいきたい郷土料理のひとつだ。(次田尚弘/新宮市)