書がつないだ92年の記憶 細畠清一さん「人生展」

清一さんの作品と美鶴さん
清一さんの作品と美鶴さん

和歌山県内の書道文化の発展に尽力し、2022年に92歳で亡くなった和歌山市の細畠清一(静峰)さんの作品を時代背景とともにたどる展覧会が、17日から19日まで、同市西汀丁の県書道資料館2階で開かれる。準備を進めてきた長女の美鶴さんは「父の歩みと、皆さんやご家族の歴史・時代に重なるものがあれば。それぞれの人生や、つながってきた命に思いを寄せる機会になればうれしいです」と話している。

清一さんは山本興石、天石東村の両氏に師事。和歌山家庭裁判所職員として勤務する傍ら書の研さんを深め、日展で連続入選するなど、若くして高い評価を受けた。

市内で複数の教室を開き、後進や書道家を育成。半世紀以上にわたって県展や市展の審査員を務めるなど、和歌山の書道界に重きをなした。2008年に市文化功労賞を受賞。県書道協会会長、青潮書道会参与などを務めた。これまでに回顧展を開いたが、今回は、激動の時代背景や歴史とともに生涯をよみとく「人生展」として紹介する。

きっかけとなったのは、美鶴さんが同館3階で開催中の「天石東村の書 壮年期作品展」に足を運んだこと。会場に入った瞬間、父が天石先生の稽古場に行く際、幼い日の記憶にあった「行ってくら~」という父の声が聞こえた気がしたという。今展に並んでいる天石の書作品の時期は、清一さんが書家として力をつけ始めた頃と重なり、作品の中に父の面影を見たようで、時を超えて共鳴し合う書に感動。「同じ空間に作品を並べさせていただきたい」との思いが、展示に向けて強く背中を押した。

今展は「細畠清一(静峰)人生展―書がつないだ九十二年の記憶―」と題して開催。山本興石、天石東村、宮下橘堂の3人の師にも焦点を当て、天石の壮年期の作品と同時期に制作された書をはじめ、昭和初期から令和に至るまでの書や、戦時中に防空壕で保管されていた教科書などの戦中・戦後資料、生活用品、写真、アルバムなどを展示する。

また、会期中には特別企画もあり、17日には和歌山大空襲体験者の上原ハツさん(93)、岩本冨紗子さん(88)の講話、和歌山市語り部クラブによる紙芝居「私は忘れない」の披露がある。18日には、山本喜美子さんの和歌山大空襲の体験談をもとにした紙芝居を、池田香弥さんが語り、昭和の音楽を演奏するミニ音楽会も予定。今回、新しく見つかった、清一さんが撮影した8ミリビデオの貴重な映像も上映する。

美鶴さんは「過去の展示では、父を通じ『和歌山の出来事や歴史を知れて良かった』というありがたい声も多く頂いた。人がつながり、新たな関係性を生む場になれば」と話している。

午前9時30分から午後5時(最終日は4時)まで。無料。問い合わせは美鶴さん(℡090・3403・0856)。