植物に由来「あせ寿司」

自生する「暖竹(あせ)」
自生する「暖竹(あせ)」

前号では、上品な味わいが人気を博す、清水地区の郷土料理「わさび寿司」を取り上げた。手に入りやすく抗菌効果がある葉で寿司を巻く文化は、これまでに取り上げてきた寿司に共通していえること。和歌山市では、なれずしなどの郷土料理の総称として「あせ寿司」と呼ばれることが多い。今週は、あせ寿司の名の由来と特徴を紹介したい。

あせ寿司と聞くと「なれずし」や「早なれずし」が頭に浮かぶ方が多いだろう。あせ寿司は寿司そのものの名称ではなく、その姿や形の総称としての呼び名で、巻かれている葉の名前に由来。寿司はサバを使ったものが一般的だが、タイ、サケ、アジ、エビ、カマス、サワラ、サンマなど、あらゆる種類が存在する。多様な具材が存在する「柿の葉寿司」と共通しているといえよう。

「あせ」という名は和歌山特有の呼び名で正式には「暖竹(ダンチク)」という植物である。主に関東以西の日本各地に自生し、竹という名前が付くがイネ科の草木とされる。4㍍程度の草丈となり、夏の終わりから秋の初めにかけて小さな穂をつける。県内各地の田畑や道端で目にすることが多い。

特徴は葉がしっかりし、長期間の発酵や重石による圧力に耐えられ抗菌作用を持つこと。そして何といっても香りの良さである。寿司に巻かれたアセの葉をむくだけで、食欲をそそる香りが漂う。近年はアセの葉に似せたプラスチック製のものが代用されることが増えてきたが、アセの葉が原型である。

よく目にする雑草という認識でいたが、その用途と使用理由をたどると地域の特性が見えてくる。和歌山特有の呼び名が、郷土料理として親しまれてきた寿司文化とともに、若い世代に伝えていきたい。(次田尚弘/和歌山市)