災害には臆病に備えて 防災士会の早稲田さん

東日本大震災直後、高かった防災意識も徐々に薄れつつある。命を守るため、日常からどのような備えが必要なのか。同震災後の被災地で、赤十字医療センターの医師に不足した薬などを中型バイクで届ける「バイクボランティア」として活動した、日本防災士会理事で和歌山県支部長の早稲田眞廣(まさひろ)さん(71)に、災害への心構えや一般家庭での防災対策などについて聞いた。

 ――震災への心構えの基本は。

災害に対して、用心深く、臆病になることです。交通事故も同じで、きょう事故に遭うと思いながらハンドルを握る人はいないでしょう。決して自分は大丈夫と思わず、避難をためらわないことが大切です。地球には想像を絶するパワーがあり、そのパワーに力で立ち向かい、防ぐことは不可能です。地球上に住んでいる限り常にリスクを負っていると捉え、私は普段から今揺れたらどうするかを考えて行動しています。災害はいつ来るか分からないからこそ、今用意しないと間に合わないという危機感を持って、防災対策や備えを徹底することが大切です。

 ――一般家庭での防災対策は。

家具の固定や家の耐震補強です。市町村や条件によっては、無料の耐震診断や補強工事の助成金などもあるので、調べてみると良いでしょう。2階建ての場合、屋根と2階分の重さがかかってつぶれやすい1階ではなく、できるだけ2階での生活を多くし、就寝前には窓が割れたときにガラスが飛び散らないよう、カーテンは閉めておくこと。家具は縦には倒れないので、家具の向きや寝る場所も再確認してください。万一家具が倒れてきたとき、隙間をつくる可能性があるという意味では、布団よりもベッドで寝るほうが良いでしょう。ちょっとした工夫で、自分を守れる可能性が高まります。

 ――地震発生直後、取るべき行動は。

重心を低くして、安全を確保しながら揺れが収まるのを待ちます。料理中でガスを使用しているときでも、無理に止めにいくと危険です。うかつに近づかないようにしてください。揺れが収まった後、外に逃げたら、地割れがないかを確認しましょう。頭、体、命を守る意識が大切です。

 ――食糧はどれくらい用意すればいいか。

食糧の前に、排せつできる環境を整えておくことが重要です。断水や排水管が壊れたことを想定し、簡易トイレなどを用意しておきましょう。食糧があっても排せつを我慢する状況では、飲食を制限することで体力が衰えてしまいます。逃げ切った後、トイレの確保ができるかは精神面にも影響します。食糧の備蓄は、政府は最低3日以上、できれば1週間と発表していますが、1週間分を推奨します。「余ればめっけもん」という気持ちで、多めに用意しましょう。

 ――食糧の備蓄は何がいいか。

お湯で20分、水で40分で戻せるアルファ米は、ひじきや五目など味も良くなっています。缶詰のご飯やパンも、さまざまな味が出ています。水は一日に3㍑使うといわれているので、取り出しやすい所に置いておきましょう。奇数月には「非常食パーティー」をするのもいいと思います。賞味期限を確認しながら家族で非常食を食べ、防災について話し合う機会にすれば無駄にもなりませんよね。

 

被災地でボランティア活動中の早稲田さん(本人提供)