広川町「稲むらの火の館」 気象庁長官表彰

和歌山県内外への地震や津波に関する積極的な知識の普及啓発に貢献したとして、「稲むらの火の館」(広川町広、﨑山光一館長)が本年度の気象庁長官表彰に選ばれた。アメダスの管理など直接業務に関わりのない施設での受賞は県内で初めて。

気象業務の発展や普及に貢献した団体を気象庁が表彰するもの。稲むらの火の館は2007年4月に濱口梧陵の偉業と精神、教訓を受け継いでいくことを目的に開館。以来、2020年度までに40万人を超える入館者に対して地震や津波に関する知識の普及・啓発を行っている。

梧陵は安政南海地震(1854年)の際に、津波から村人を救うために稲むら(稲束を積み重ねたもの)に火を放ち、火を目印にして村人を安全な場所に避難させたことで知られる。

津波によって大きな爪痕が残ったふるさとの復興のために被災者用の小屋の建設や農機具、漁業道具などの提供、津波から村を守る長さ600㍍、高さ5㍍の防波堤の築造にも取り組んだ。

地元の小学校では定期的な避難訓練や避難経路の把握をして備えており、地元の人々も「昔から梧陵さんの話が伝えられ、すぐに逃げるように教わった」と話すほど、防災への意識が高い。

10日に同館で行われた表彰式で、和歌山地方気象台の石井嘉司(よしもり)台長が﨑山館長に表彰状を手渡した。石井台長は「長年にわたり津波防災への普及啓発をしており、すごく貢献されている。今後も将来起こるとされる南海トラフ地震に備え、防災知識を高めるために伝えてほしい」と話した。

﨑山館長は「ありがたい気持ちでいっぱい。訪れた子どもたちには、『大丈夫と思ってもまず避難してください』と伝えている。どんな災害にも応用が効くので早めの避難をこれからも伝え続けていきたい」と話した。

本年度中には、同館と和歌山地方気象台が協力し、県民を対象に稲むらの火についての講演会を開いて普及啓発を推進する予定。

 

表彰を受けた稲むらの火の館の﨑山館長㊧と和歌山地方気象台の石井台長