さようなら「車庫前」 和歌山バスが名称変更

和歌山市西高松にある和歌山バスの停留所「車庫前」。市電が走っていた頃から長く市民に親しまれてきた名称が、23日から「高松北」に変更になる。さらに3カ所(往路1カ所、復路2カ所)あった同名のバス停は2カ所に統合される。市民からは「愛着がある名称がなくなってしまうのは寂しい」と残念がる声も聞かれる。

中心市街地の再編に伴い、観光客にも分かりやすくすることなどを目的に和歌山バス㈱が変更を決めた。同社によると、同停留所は南海和歌山軌道線(通称=市電、1971年3月31日廃線)の車庫が近隣にあったことから、「車庫前」と命名。同じく路線バスの停留所名もそれに合わせて付けられたのではないかという。

今も国道42号を東にそれた、いわゆる旧電車道にバス停はあり、車庫はないが「車庫前」と呼ばれてきた。しかし、今回の変更で同所の歴史を広く今に伝えてきた名称が消滅することになる。

一方、往路の「車庫前」のバス停から旧西本カメラ本店沿いの西20~30㍍先に、もう一つのバス停「車庫前」がある。経年劣化でバス停名は読めないが、れっきとした「車庫前」。時刻表は、平日の午前7時29分始発のJR和歌山駅行きバスが1本のみ。この「車庫前」は、市内でも乗車率の高いバス停の一つで、朝の通勤、通学時間の輸送力を上げるため、同所で折り返して運転。他のバスのように4駅先の和歌浦口まで行く必要もなく、時間短縮にもつながっていたという。同社が営業を開始した1976年から同名のバス停はすでに3カ所あり、いつからあったかは不明だという。

今回の見直しで、同所からバス停は撤去され、23日以降、利用者は「高松北」のバス停から同時刻ごろに発車するバスに乗ることとなる。

市内に住む50代女性は「『車庫前』を知らない世代が多くなったので仕方ないのかもしれませんが、歴史をひもとくきっかけになり、名称を残す選択があってもよいのでは。市電には家族の思い出もあり、愛着があったので残念」と話す。娘が通学に同バス停を使っているという近所の40代女性は「始発だったので、混雑することなく子どもを安心して乗せられていた。『車庫前』の名前が変わるのは寂しい」と残念そうに話していた。

同バス停は、廃線後も周知のため1~2週間程そのまま置いておき、その後天候に合わせて撤去するという。

この他、「公園前」は観光客などにより分かりやすく「和歌山城前」に、「市民会館前」は同館が和歌山城ホールとして市役所の東隣に移転するため、「湊本町三丁目」となり、「小人町」は読み方を「ちょう」から「まち」にするなど、計9カ所のバス停の名称を変更する。それぞれ要望や、建物の移転などでその場所にそぐわなくなった名称もあり、このタイミングで見直したという。

同社の担当者は「最初は慣れないかもしれませんが、バス停の名前が変わるだけなので、通常通りご利用ください」と話している。

「車庫前」からJR和歌山行きのバスに乗る利用者

「車庫前」からJR和歌山行きのバスに乗る利用者