ユニークな形の「仏手柑」

新しい年を迎え、ご自宅で生け花を飾ったという方も多いだろう。その装飾の一つとして、ある柑橘(かんきつ)を用いたという方はいらっしゃらないだろうか。
果実の先が幾つにも広がっているさまから、末広がりを感じさせ、商売繁盛を祈願し、正月に飾られるユニークな柑橘。その名は「仏手柑(ぶっしゅかん)」。幸運をもたらすといわれる仏手柑を紹介したい。
仏手柑は、ミカン科ミカン属の一種で、前号で取り上げた柚子と同じ、香酸柑橘類の一種。元々はシトロンというインド原産の柑橘が変異してできたものとされる。幾つにも広がる果実は千手観音を思わせることからその名が付けられた。
12月ごろに収穫され、年末にかけて花屋などで販売されるが、栽培する農家が少なく希少価値が高い。都会では、一つ2千円程で販売され、形が良いものは1万円を超えることもある。筆者は産直市場で購入したが、正月飾りとして使用できるよう葉がついたまま、高級なイチゴを包むようなクッション材が施されていた。
目にする機会が少ないかもしれないが、その歴史は古く、江戸時代から生け花に使われ、また、絵皿や彫刻に描かれるなど、芸術の分野では知られた存在。茶の席では無くてはならないものとまでいわれる。
栽培数が少なく、あまり身近ではない仏手柑であるが、その魅力にふれていきたい。
(次田尚弘/和歌山市)