災害医療対応棟完成 和歌山ろうさい病院

地域の安全守る拠点

 

和歌山ろうさい病院 災害医療対応棟が完成

 

和歌山ろうさい病院(和歌山市木ノ本、南條輝志男病院長)に新たに「災害医療対応棟」が完成し、2日に竣工式が行われる。同病院は災害拠点病院に指定されており、今回の増築工事により、自家発電量の倍増や負傷者受け入れスペースの確保、備蓄倉庫の拡充などを実現。被災時にも通常の医療を提供できるようになり、より一層、地域の安心安全を守れる拠点病院へと進化した。

 

3階建て新棟の外観

 

同病院が「大災害に強い病院づくり」を目指す背景には、東日本大震災が発生した直後、2011年4月に就任した南條病院長の「和歌山ろうさい病院を大規模災害に強い、地域の拠点病院にしたい」という強い思いがある。

当時、同市の紀の川以北に災害拠点病院はなく、災害発生時の医療孤立が心配されていた。同病院は12年3月、災害拠点病院に指定された後、15年7月に屋上にヘリポートを設けた「災害医療研修棟」を完成させるなど、着々と大災害に備えた体制整備を進めてきた。

しかし18年、台風21号による停電が長引き、一部の医療を中断しなければならない状況に直面。事業継続計画(BCP)の重要性を再認識し、被災時にも通常の医療を提供できる「災害医療対応棟」の計画に至ったという。

県と国からの「災害時拠点強靭化緊急促進事業補助金」を活用し、新たに災害医療の建物を造るという全国初のモデル事業として、国土交通省も期待を寄せている。

 

 

感染者隔離スペースも コロナ禍の経験生かし確保

 

 

「災害医療対応棟」は本館の南側にある「災害医療研修棟」に隣接するように新築。総工費6億6600万円。設計は㈱佐藤総合計画(関西オフィス・大阪市中央区)、施工は三友工業㈱(和歌山市湊)。鉄筋コンクリート造りの3階建てで、敷地面積が約2万6000平方㍍、延べ床面積が約1300平方㍍。

全てのフロアに「負傷者受け入れスペース」を設け、負傷者待機室として13の個室を完備。うち7部屋は感染者用の陰圧個室にすることで、感染者を隔離できるスペースを確保した。当初からインフルエンザなどの感染症を想定した隔離スペースを計画していたが、コロナ禍の経験をもとにスペースを拡大。

水や食料はもちろん、マスクなどの備蓄が不足することのないよう、3階には防災備蓄倉庫を拡充するとともに、医療スタッフが当直待機できるスペースも確保した。

 

負傷者受け入れスペース

 

拡充した防災備蓄倉庫

 

 

 

重要インフラの機能維持 被災時も通常医療を継続

 

 

3階に設置した自家発電機は、本館と同じ出力1000kVA(キロボルトアンペア)の機器を導入。これにより自家発電量は2倍となり、停電が発生した場合は、自家発電装置に切り替えることで、消費電力が大きいMRIやCTも使用可能となり、平常時と同じ医療を提供できる。既設の災害医療研修棟と共に災害時に重要なインフラ機能の維持を支える心強い2本柱となった。

着々と進めてきた「大災害に強い病院づくり」について、南條病院長は「県民への貢献度は上がっているが、まだ志半ば」と話す。昨年に和歌山市の紀の川以北地域で起きた大規模断水を受けて、「次は水。かなり余裕のある貯水タンクが必要」とすでに新たな課題を掲げる。

「地域のブランド病院として、期待を裏切らない、頼れる病院であり続けたい」という強い思いのもと、今後も災害拠点病院として、あらゆる角度からその役割を果たしていく。

 

心強い大きな自家発電機

 

 

 

 


 

 

災害医療二本目の柱完成
病院長 南條輝志男

私は着任以来、大災害に強い病院づくりに邁進して来ましたが、この度、県と国(国土交通省)の深いご理解とご支援の下、災害医療対応棟竣工式を迎えることが出来ました。関係各位に心から感謝申し上げます。これにより、自家発電量が倍増され、大災害時にも通常医療の維持や新型コロナウイルスなど未曾有の感染症への対応も可能となります。
災害医療研修棟(平成27年)に続く二本目の柱として活用し、地域の皆様の期待を裏切らないブランド病院としての更なる活動をお誓いします。

 

地域に頼られる病院に
衆議院議員 二階俊博

和歌山ろうさい病院の災害医療対応棟のご竣工、心からお慶びを申し上げますと共に、南條輝志男病院長はじめ、関係の皆様に心から感謝と敬意を表します。
これまでも、災害拠点病院として、有事の際にはより多数の患者さんを受け入れることが出来るよう積極的に取り組まれて来られましたが、この度の国土強靭(きょうじん)化予算を活用しての完成に、私も喜び一入です。
和歌山ろうさい病院が益々地域から頼りにされ、発展されますことを願っています。

 

重要な役割に期待
県知事 仁坂吉伸

災害医療対応棟の完成おめでとうございます。
和歌山ろうさい病院には、和歌山保健医療圏の紀の川以北にある唯一の災害拠点病院として重要な役割を担っていただいております。
感染症に対応できる個室も整備されている災害医療対応棟の完成は、和歌山保健医療圏のみならず、県全体の災害医療体制強化につながるものと、大変心強く思っております。
今後とも、地域住民への安全で安心な医療の提供に大きく貢献していただくことを期待いたします。

 

心強い施設が完成
和歌山市長 尾花正啓

新棟の完成を心よりお祝い申し上げます。
医療ガス配管や自家発電量が倍増されたこの施設の完成により、大規模災害時に更に多くの傷病者の避難や治療が可能となります。今後も災害時の拠点病院として非常に重要な役割が期待され、本市としては心強いばかりです。 新型コロナウイルス対策への多大なるご協力に感謝するとともに、より一層連携を密にし市民の命を守るまちづくりを推進してまいります。
建設にご尽力された皆様方に心から感謝いたします。