「かんきつ中間母本農6号」
前号では紀北地方で盛んに栽培されている、国内産の「ネーブルオレンジ」を取り上げた。果汁が多く甘味と酸味が濃い特徴を持つネーブルオレンジだが、近年栽培され始めた希少な品種で、それを上回る味わいのものがある。今週は「かんきつ中間母本農6号(通称・東京オレンジ)」を紹介したい。
かんきつ中間母本農6号は、1986年に静岡県にある果樹試験場で「キングマンダリン」に「無核紀州」を交雑し育成した雑種で、栽培が容易。2004年に品種登録された。ボコボコとした外皮で、張りのある一般的な柑橘(かんきつ)と比べると見劣りするが、味は抜群。サイズが小さめで外皮が硬くむきづらいことから、袋(じょうのう)ごと食べるには不向き。搾ってジュースとしていただくのがおすすめ。
不向きとされるが袋ごと食べると、やや袋の硬さはあるものの十分おいしくいただける。しかし、何といってもジュースにしたときの味わいが格別。さらりとした飲み口で、甘過ぎない食感はやみつきになってしまいそう。果実1個から150㍉㍑程度のジュースを搾り出すことができた。
親の品種となっている「無核紀州」とは、他の柑橘と交配しても種ができない品種。果実は小さいが果汁が多くて香りも良く、さらに適度な甘味と酸味を持つことから、親譲りで紀州にも縁のある品種といえよう。
かんきつ中間母本農6号の生産量は少なく統計値として主な生産地を知ることはできないが、県内では広川町などで栽培されている。筆者は産直市場で購入したが、希少な品種であることが明記され、店員からもその旨を教えてもらった。
今後、ヒットが期待される品種。見掛けることがあれば購入し、その味わいを確かめてみてほしい。
(次田尚弘/和歌山市)