IR誘致は否決 仁坂県政の中核政策頓挫

和歌山県議会は臨時会最終日の20日午後、カジノを含む統合型リゾート(IR)の「区域整備計画」の国への申請に必要な議決を求める議案を賛成18、反対22で否決した。仁坂県政が県経済活性化の起爆剤として推し進めてきた中核政策の実現は、国への申請前についえることになった。

同計画への立地市の同意は3月30日の和歌山市議会で得られており、4月28日が期限となる国への申請に必要な重要手続きは県議会の議決を残すのみとなっていたが、カナダ系のIR事業者「クレアベストニームベンチャーズ」が示す資金調達計画への疑念などから、県議の賛否は拮抗(きっこう)。議案を審議した各委員会の判断は分かれ、本会議での議決の成立は見通せない状況が続いてきた。

20日午前10時に始まった本会議はすぐ休憩に入り、最大会派の自民党県議団が会派会合を開いた。

その後の10時半からIR対策特別委員会が急きょ開かれ、県当局に虚偽答弁の疑いがあるとして19日に決議した、地方自治法第100条に基づく「百条委員会」の設置について、提案した吉井和視県議が「職員個人の責任追及になりかねない」などとして取り下げを申し出た。設置の可否は本会議に諮るべきとの意見もあったが、賛成多数で決議の取り下げが決まった。

本会議は午後1時に再開。区域整備計画の議案は、共産党の高田由一県議が反対の立場で討論した後、会派代表者会議での合意に基づき、無記名投票により採決が行われた。

森礼子議長が「賛成18、反対22」と投票結果を発表すると、傍聴席で行方を見守っていた誘致反対の市民から拍手が起こり、グータッチなどで喜び合った。傍聴者の一人、和歌山市の山中美知子さん(72)は「すごくうれしい。子や孫の世代にカジノを残すのは考えられないと思い、署名にも協力した。活動が実を結んだ」と話した。

閉会後、報道陣の取材に応じた森議長は「(IR対策)特別委員会で深く協議した結果がきょうの(採決の)数字に表れていると思う」と述べ、区域整備計画の中の不透明な部分が明らかにされなかったこと、コロナ禍で情勢が不安定だったことなどを否決の要因に挙げた。

当初はIR推進派ながら、今回の計画に対して賛否が割れた自民党県議団ではさまざまな声が聞かれた。賛成した玉木久登県議(有田市)は「国に(計画の可否の)判断を仰げたら良かったという思いでいっぱいだが各議員の判断なので尊重したい」、反対票を投じた冨安民浩県議(日高郡)は「IRには賛成だが業者の資金計画などが生煮えなので今回は反対した」と話していた。

 

区域整備計画申請の可否を問う議案に投票する県議ら

 

 


尾花市長「残念」 経済団体、取り組み継続を

 

県議会でIR誘致に関する区域整備計画申請が否決されたことを受け、関係の自治体などからさまざまな反応があった。

立地市の和歌山市は申請に同意していた。尾花正啓市長は「IRは雇用創出や経済成長などの効果が期待できるチャンスとして県と連携して取り組んできた」とした上で「否決となったことは残念」とコメントした。

同じくIRを推進してきた県経済団体連合会は「大変残念の一語に尽きます」とし、県に対して「チャンスがある限り、引き続き、IRの実現に向けて取り組んでいただきますよう強く要望いたします」とのコメントを出した。同連合会は、県商工会議所連合会▽県経営者協会▽和歌山経済同友会▽県商工会連合会▽県中小企業団体中央会――の5組織で構成される経済団体。