農業振興につながる「金柑」の事例

前号では、木成り栽培で際立つ甘さが特徴の高級柑橘(かんきつ)「南津海(なつみ)」を取り上げた。今週は、一般的に柑橘類として扱われる「金柑(きんかん)」を紹介したい。
金柑はミカン科キンカン属の果物で、見た目は柑橘だが、これまで紹介したカンキツ属のものとは異なる分類になる。特徴は、外皮をむくことなくそのまま食べられること。食してみると甘味の中に若干の苦みがある。外皮ごと食べられることからビタミンCを豊富に取ることができるのもうれしいところ。
金柑の多くは中国原産。江戸時代に中国から静岡県に伝わったといわれている。重さは15㌘程度。そのまま食する他に、甘露煮やジャムに調理される。
2018年の農水省統計によると、生産量第一位が宮崎県(70・4%)、第二位が鹿児島県(24・3%)、第三位が熊本県(1・9%)、第四位が和歌山県(1・4%)、第五位が佐賀県(1・2%)で、和歌山県は第四位の生産地としてランクインしている。
生産量第一位の宮崎県では「たまたま」というブランド名で売り出されており、県知事の積極的な宣伝により一躍有名になったことも。
宮崎県では開花結実から210日以上を経過し、糖度16度以上、Lサイズ以上のものにのみ「たまたま」の使用を認めるなど基準を設けている。中でも、糖度18度以上、サイズが直径3・3㌢以上のものには「たまたまエクセレント」という名称で売り出すことができ、ブランド品としての打ち出しに成功している。生産量第二位の鹿児島県でも認定制度を設けており、糖度16度以上のものに「春姫」「いりき」という名称が付けられている。
農業振興につながる有望な事例として参考にしていきたいものである。
(次田尚弘/和歌山市)