和歌山生まれの「桃山白鳳」
前号では、極早生なのに甘さが期待できる希少品種「はなよめ」を取り上げた。時を同じくして市場に並ぶ、和歌山県で生まれた品種がある。今週は「桃山白鳳」を紹介したい。
桃山白鳳は、1984年に旧桃山町(現在の紀の川市桃山町)で発見された白鳳の一樹変異を育成したもの。88年に品種登録され、以後、この地域を中心に栽培されている。
元となった品種である白鳳と比べ熟すのが早く、満開から80日から90日程度で成熟期を迎え、6月下旬から7月上旬ごろに収穫する早生品種となっている。果重は220㌘程度で円形をしており縫合線が浅いのが特徴。果皮は濃いめで、むきやすくなっている。果肉は乳白色で着色は少なく、果汁が多いのに実がよく詰まっており、甘味を感じることができる。
農水省の統計値(2018年)によると、栽培されているのは和歌山県のみで面積は16㌶。統計上表記されない若干数は県外でも栽培されているだろうが、和歌山県固有の全国的に珍しい品種といえよう。
発見された旧桃山町はその名のとおり桃の栽培が盛んな一大産地。この地域で収穫される桃は「あら川の桃」のブランド名で知られる。砂れきを含み水はけに優れた地質と温暖な気候が桃の栽培に適し、上質な出来栄えは高く評価される。桃山白鳳は桃シーズンの到来を知らせる存在として親しまれている。
県内の一大産地である「桃山」の地名を名前に付けた桃山白鳳。ぜひ味わってみてほしい。
(次田尚弘/和歌山市)