有吉の『紀の川』題材に 中尾さんが絵画
和歌山市生まれの作家・有吉佐和子の小説『紀ノ川』を題材に長年絵画を描いてきた、同市三葛の洋画家・中尾安希さん(81)は、3号の油彩画「桜の和歌山城」1点を同市伝法橋南ノ丁の有吉佐和子記念館1階エレベーター横に展示。「有吉ゆかりの館で、小説『紀ノ川』に登場する和歌山城をたくさんの人に見てもらいたい」と話している。30日まで。
中尾さんは、30歳代から40歳代に、九度山町の慈尊院から和歌山市にかけて取材。小説『紀ノ川』の舞台となった場所や風景を油彩や水彩で描いた。約10年間で制作した作品は200点以上。2014年には有吉没後30年を記念し、小説『紀ノ川』をテーマにした個展を開いている。
根っからの有吉ファンでもある中尾さんは、刊行されている作品は全て読破。1986年発足の「有吉佐和子の作品を読む会」にも参加し、「和歌山弁を使い、その時代、時代を上手に描き出している」と魅力を語る。
今回展示した油彩画は、和歌山城二の丸広場から見た天守閣を描いている。小説『紀ノ川』の最後は、主人公の1人が天守閣に登り、紀の川の流れを見ながら、思いをはせる姿が描写されている。中尾さんは「とても印象的なシーンで、『紀ノ川』を象徴するならここだ」とこの絵を選んだという。
同館はことし6月にオープン。東京にあった有吉の邸宅を、移築、復元している。有吉の直筆原稿や再現した書斎などを見学できることから、県内外から多くのファンが集い、開館から2カ月で8685人(7月31日時点)が来場している。
入館無料。午前9時から午後5時まで。水曜休館。