僧帽弁閉鎖不全症でカテーテル治療 医大
和歌山県立医科大学は12日、心臓の中で血液が逆流する心臓弁膜症の一種、僧帽弁(そうぼうべん)閉鎖不全症の患者に対し、県内で初めてとなるカテーテル治療に成功したと発表した。
僧帽弁とは、心臓の左心房から左心室に血液を送り出す弁で、開いたり閉じたりすることで肺から心臓に届く酸素の豊富な血液(動脈血)を全身に送り出す役割を担う。僧帽弁閉鎖不全症は何らかの原因で僧帽弁がうまく閉じなくなり、血液が左心室から左心房へ逆流することで発生する。重症化すれば心不全を引き起こす危険性も高くなり、心臓のポンプ機能が悪化した心不全患者の5人に1人はその症状を有し、死亡率にも大きな影響を与えるという。
有病者数は県の高齢化率から換算すると1000人以上いるとされ、そのほとんどは手術が必要。これまでは開胸手術のみでしか対応できず、高齢者では体の負担が大きく再発のリスクもあり、手術を断念せざるを得ないケースも少なくなかった。
今回成功したカテーテル治療は「経皮的僧帽弁クリップ術」といわれる方法で、動脈から挿入した細い管(カテーテル)にクリップを持ち込み、僧帽弁の逆流部位をつかんで留置する。2018年から日本循環器学会による施設認定が始まり、現在、全国に110ある認定施設のうち、和歌山県立医科大付属病院は85番目に認定を受けた。この方法で手術を受けられる施設は県内で唯一。
手術は先月15日、70代の心不全患者に対して行われた。時間も約1時間程度で完了し、術後経過も良好だという。
手術を担当した循環器内科の田中篤教授(57)、和田輝明助教(38)は、「高齢のため手術を断念せざるを得なかった患者も、この方法なら体の負担も少なく治療を受けることができます。これまで紀南の患者は大阪など遠く県外の病院まで行かねばならず、高齢の方は手術を諦めるケースもあったが、今後はそうした負担も小さくなる。さらに県内で治療できる施設が増えることが期待される」と話している。