郷土の歴史演劇で 海南で「橘とお菓子の物語」

和歌山県海南市の歴史にまつわる田道間守(たぢまもり)をテーマにした舞台「橘とお菓子の物語」が27日、下津町の市民交流センター「ふれあいホール」で上演され、約470人が演劇や歌謡ショーを楽しんだ。同市且来の劇団紀州(㈱すわん江戸村、河村海人代表)が主催。

田道間守は、ミカンの原種で菓子の起源とされる「橘」を中国から持ち帰り、同市下津町の「六本樹の丘」に植えたとされ、ミカンとお菓子の神様として同町の橘本神社に祭られている。

昨年、田道間守が死去してから1950年がたつのを記念し、同劇団が「田道間守公1950年式年大祭記念公演」として、芸道場すわん江戸村で同舞台を上演。好評だったことに加え「一人でも多くの県民に田道間守の存在を知ってもらいたい」との思いから今回のリバイバル公演が決まった。

物語は、田道間守が垂仁天皇から「不老長寿の不思議な果実『非時香菓(トキジクノカグノコノミ)』を探せ」という無理難題を押し付けられ、船に乗り命懸けで大陸へ渡るという冒険もの。子どもにも分かりやすいように同劇団の市川昇次郎さんが現代風にアレンジし、お菓子の神様として愛される田道間守と、彼を取り巻く人々の数奇な人生を楽しく描いた古代ロマン・コメディーに仕立てた。

せりふには「なんよー」「いってくら」などの和歌山弁やジョークを交え、親しみやすさや面白さにこだわった。劇中では、同市観光協会が「お菓子の街」としてPRするために制作したテーマ曲「しあわせの味」を、作詞・作曲を担当した音楽ユニット「あやこと」の2人が歌い、県内のキッズダンサーらが振り付けを披露し、花を添えた。

鑑賞した橘本地域でミカン農家を営む橋爪隆司さん(50)は「祖父や父から田道間守の話は聞いたことがあるが、きょうの公演で初めて知ることもあった。改めて語り継ぎ、守っていかないといけないと思った」と話した。市川さんは「ミカンのお話なので下津で開催したかった。この場所がミカン発祥の地だと皆さんに伝わったなら何よりうれしい」と喜んだ。

二部の舞踊歌謡ショーでは、尺八奏者の辻本好美さんや、歌手の松阪ゆうきさんがゲスト出演し、演奏や歌を披露した。

 

「橘」を持ち帰った田道間守をテーマに上演された