シーズン終盤に登場「富有柿」

前号では樹上で脱渋を行い、黒い実が特徴の「紀の川柿(きのかわがき)」を取り上げた。
今週は柿の中で全国の栽培面積が最も広い「富有柿(ふゆうがき)」を紹介したい。
富有柿は岐阜県で生まれた甘柿で、甘柿の代表的存在。重さは250㌘程度で丸みがある。歴史は古く、「居倉御所(いくらごしょ)」と呼ばれる柿が起源で、安政3年(1857)から栽培が始まったとされる。食味が優れたものを接ぎ木により育て、明治31年(1898)の品評会で高い評価を得たことを契機に全国に広まった。
果実は丸みを帯び、果皮には光沢がある。産地により色や形が少し異なり、西になるほど赤く、東になるほど形が平たくなる傾向にある。果肉はとろけるような柔らかさで甘味が強く、果汁も豊富である。
農水省統計(2019年)によると、栽培面積の第1位は奈良県(887㌶)、第2位は福岡県(496㌶)、第3位は岐阜県(482㌶)、第4位は和歌山県(438㌶)、第5位は愛媛県(140㌶)となっている。全国の総栽培面積は2951㌶で、平核無柿の2069㌶、刀根早生の2065㌶を抜いて全国トップの栽培面積を誇る品種である。
旬は10月下旬から12月中旬ごろまで。冷蔵で貯蔵され、翌年2月ごろまで出荷されるものもある。収穫から食べ頃までの期間が比較的短いため、硬めの食感や日持ちをさせたいときはポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室などで保管するのがお薦め。柔らかくなったものは凍らせてシャーベットにしてもおいしく、硬いものは野菜と一緒にサラダとして食べるのもお薦め。
甘味が強くジューシーな味わいが特長の富有柿。柿のシーズン終盤に、ぜひご賞味いただきたい。
(次田尚弘/和歌山市)