1歳女児に心臓移植を 和歌山市にも募金箱
何か少しでも手助けができれば――。重い心不全で心臓移植が必要な東京都の佐藤葵ちゃん(1)がアメリカで移植手術を受ける資金を集めるため、和歌山市の井口貴子さん(62)が同市本町のフォルテワジマ1階のインフォメーションに募金箱を設置。「一人でも多くの人にあおちゃんの存在を知ってもらって、ちょっとでも気持ちの支援をしていただければ」と募金を呼び掛けている。
同館1階の鮮魚コーナー「紀州うお幸」を営む井口さんは先月、県外に住む次女からの連絡で葵ちゃんの存在を知った。
娘婿と葵ちゃんの母親が友人だったことから、移植手術を受けるための寄付金を募っていることを知らせるメッセージを受け取った。「あおちゃんを救う会」のリンクを開くと、目に飛び込んできたのはページの冒頭に書かれてある「わたし、きょうもいきたよ」という言葉。
井口さんは「それを見ただけで涙が出てきて、それ以上読めなかった」と振り返る。その後、居ても立ってもいられず周りの友人や知人にメッセージを送ると、テレビや新聞などですでに知っていた人もいて、新たに情報をもらうことも。
昨年10月31日に生まれた葵ちゃんは、翌11月1日に生まれた自身の孫と重なった。葵ちゃんは生後間もなく先天性心疾患と診断。2カ月の時に人工心肺を使用した心内修復術とペースメーカー植え込み手術を受けたが回復せず、重症心不全と診断された。
7カ月の時には医師に「残る治療は心臓移植しかない」と告げられ、現在は埼玉医科大学国際医療センターに入院し、移植までの橋渡しとして補助人工心臓(外付けの心臓)とペースメーカーで命をつないでいる。
補助人工心臓をつけたことで脳梗塞や脳出血、感染症などのリスクも高くなり、一刻も早く心臓移植を受ける必要がある。一方、アメリカでの治療は日本の公的医療保険が適用されず、補助人工心臓をつけたままの移動には医療用ジェット機が必要なため、莫大な費用がかかる。
さらに、急激な円安などが影響し、約5億3000万円もの費用が必要と見込まれる。寄付金を募るため、8月には「あおちゃんを救う会」が発足。同会の活動を知った井口さんが、和歌山でも寄付を募りたいと募金箱の設置を決めた。
募金箱を手に、井口さんは「何か一つでも手助けができたら。その思いだけ」と力を込める。また「あおちゃんに命の尊さを教えてもらった」と話し、「募金を通してあおちゃんの存在を知り、当たり前の毎日は決して当たり前ではないことや命の尊さを知って、感謝の気持ちで日々を過ごしていってほしい」と願っている。