近大等のグループ 腸内細菌の研究で成果
近畿大学・群馬大学・金沢大学は、腸内細菌によって作り出された「芳香族アミン」の一種である化合物「フェネチルアミン」が、宿主の腸内で神経伝達物質セロトニンの産出を促進していることを明らかにした。セロトニンの過剰産出が原因で発症する骨粗しょう症や過敏性腸症候群の新たな治療法開発への応用が期待される。
近畿大学生物理工学部食品安全工学科の栗原新准教授、群馬大学食健康科学教育研究センターの杉山友太助教、金沢大学新学術創成研究機構の岡本成史教授を中心とするグループによる研究で、石川県立大学、京都大学とも共同研究。
腸内細菌が作り出す産物は、健康状態にさまざまな影響を及ぼす。芳香族アミンは少量でも神経伝達に影響を与える化合物で、肉や豆などのタンパク質に材料として含まれる芳香族アミノ酸を腸内細菌が変換することで腸内に作り出される。これまで腸内細菌が作り出す芳香族アミンの量と種類を、遺伝子レベルで解析した研究はほとんどなく、未解明な点が多かった。
同研究グループは、ヒトの腸内細菌のうち占有率の高い32種について試験管内での培養実験などを行い、5種類の細菌が芳香族アミンの一種フェネチルアミンを作り出すことを明らかにした。
芳香族アミンを生成できる細菌が腸内に存在すると、大腸内の末梢セロトニンの量が増加し、骨粗しょう症や過敏性腸症候群を引き起こす。研究グループは、芳香族アミンの生成を抑制する既存薬を用いることで、腸内細菌によるフェネチルアミンの産生量が減少することを確認しており、この阻害薬が、セロトニンの過剰産出を原因とする疾患の治療薬として有望であると示唆されたとしている。