180年近い歴史を持つ「次郎柿」
前号では全国の栽培面積が第1位で、シーズン終盤に登場する「富有柿(ふゆうがき)」を取り上げた。富有柿と共に柿の代表格として比較されるのが「次郎柿(じろうがき)」。「富有柿は顎で食べ、次郎柿は歯で食べる」といわれ、果肉が柔らかい富有柿と比べ、次郎柿は硬めで歯応えがある食感。今週は次郎柿を紹介したい。
次郎柿の歴史は古く、1844年に静岡県周智郡森町に住む松本治郎吉氏が川の上流から流れてきた柿の幼木を見つけ、これを自宅に植えたのが始まりとされている。この木は静岡県の指定天然記念物として保存されている。
名前の由来は発見した治郎吉氏にちなんでおり、「治郎さんの柿」と呼ばれたことから「次郎柿」と書かれるようになり、現在に至っている。次郎柿は枝替わりによる系統が多数あり、「一木次郎」「前川次郎」「焼津早生次郎」など、いずれも人の名前のような名となっている。
次郎柿は完全甘柿で、重さは200~300㌘とやや小ぶり。平核無柿のように四角い形をしているが、ヘタがある果頂部分には、へこみがある。果肉を見ると緻密で硬く果汁は少なめ。糖度は17度程度ある。食してみると硬さはあるもののサクっとした食感。その後に上品な甘さがある。生食に加え、崩れにくい特徴から薄くスライスしサラダなどにアレンジするのもお薦め。
2019年度の農水省統計によると、栽培面積の第1位は愛知県(44・6㌶)、第2位は静岡県(32・2㌶)、第3位は愛媛県(17・9㌶)となっており、和歌山県の栽培面積の記載は無い。筆者は和歌山県内の産直市場で購入。わずかながら県内でも栽培されているようだ。
旬は10月下旬ごろから12月上旬ごろまで。富有柿と一緒に食べ比べしてみてほしい。(次田尚弘/和歌山市)