甘柿のルーツ「御所柿」

前号では糖度が高く程よい食感が特徴の「甘秋柿(かんしゅうがき)」を取り上げた。今週は甘柿のルーツともいわれる「御所柿(ごしょがき)」を紹介したい。
御所柿は奈良県御所市で生まれたとされる。歴史は古く1645年の書物で大和の名産品として取り上げられており、甘味が強く粘り気が多い食感から「天然の羊羹」といわれ、極上の柿として幕府や宮中に献上されていたという。
御所柿は突然変異によりできた品種とされ、成長過程で渋みがなくなる完全甘柿として各地へ広まった。富有柿は、御所柿を別の木に接ぎ木して育成されたもので、やがて御所柿よりも富有柿が一般的となっていく。外観が優れず、栽培が難しいことから次第に栽培される本数が減り、今や「幻の柿」とまで言われるようになった。
現在、奈良県御所市では御所柿を復興させ、特産品にする動きが起きている。2009年には市場への出荷を開始し、12年の出荷数は700㌔㌘となった。奈良県内に残る御所柿の古木は約50カ所。樹齢300年を超えても十分に味の良い果実ができるという。
御所柿のサイズは小ぶりで150㌘程度。扁平で果頂部はややとがった形をしている。ヘタは5~6弁と個体によって差があり、果形も五角形や六角形とさまざま。糖度は17~20度と高い。食してみると粘り気のある肉質が特徴で、まさに天然の羊羹といえる。
筆者は御所柿をかつらぎ町内の産直市場で購入した。奈良県内でもわずかな栽培量の希少品種でありながら、和歌山県内でも栽培されている。御所柿の旬は11月中旬から12月上旬ごろ。和歌山県内のみならず手にする機会はまれであると思うが、見つけた際はぜひご賞味いただきたい逸品である。(次田尚弘/和歌山市)