期待の品種「溝端早生柿」

前号では天然の羊羹と称され、甘柿のルーツとされる「御所柿(ごしょがき)」を取り上げた。今週は和歌山県内で生まれた「溝端早生柿(みぞばたわせがき)」を紹介したい。
溝端早生柿は「松本早生富有柿(まつもとわせふゆうがき)」の変異種で、1980年に発見、2005年に品種登録されたもの。複数植えた松本早生富有柿の1つが早く色づくことに生産者が気付き、大玉の実ができることから変異種であることが判明したという。かつらぎ町で農業を営む溝端さんが発見し、自らの名前を付けたことがその名の由来である。
富有柿よりも少し早い10月中旬に成熟する完全甘柿で、果実は大きいもので400㌘を超えるものもある。果形はやや扁円をしている。食してみると果肉が緻密でカリっとした食感。甘さも抜群で糖度は20度になるものもある。
完全甘柿とは果実に種が入らなくても渋みが抜けるもの。柿には甘柿と渋柿があることは前述のとおりであるが、実際には「完全甘柿」「不完全甘柿」「不完全渋柿」「完全渋柿」の4種類がある。不完全甘柿とは果実に種が多く入ることで渋みが抜けるもの(西村早生柿や禅寺丸柿など)。不完全渋柿とは種の周辺だけ渋みが抜けるもので(刀根早生柿や平核無柿など)、いずれも渋抜き後に出荷される。溝端早生柿は富有柿や次郎柿と同様に渋抜きが不要な品種である。
農水省統計で栽培面積の記録はないが、市場に出荷される程度の収穫量はあるよう。筆者はかつらぎ町内の産直市場で購入。品種登録されているかつらぎ町を中心に出回るとみられる。
サイズが大きく甘さも抜群の溝端早生柿。来シーズン、見掛けることがあれば購入し、和歌山生まれの柿を存分に味わってみてほしい。(次田尚弘/和歌山市)