甘さと弾力がある「愛宕柿」
「愛宕柿(あたごがき)」は愛媛県で生まれた渋柿。脱渋が難しい品種であることから、主に干し柿に加工される。果実の大きさは300㌘程度で、釣り鐘状で先が細く尖っているのが特徴。表皮は艶がありオレンジ色が美しい。名前の由来は諸説あるが、京都の愛宕山に奉納された際に名前をもらった、あるいは、愛宕山にあった柿の種からできた実であることに関係するという。
通常の柿と違い、販売時には大きく「渋柿」と書かれ、脱渋していないことからむいて食べることはできない。そのため、食するためには一工夫必要で、干し柿にする必要がある。物によっては販売時に袋詰めされた柿と一緒にビニールひもが同梱されていることも多い。また、果実をつるしやすいようヘタの部分に木の一部を残す工夫がされている。干し柿にするための方法は改めて紹介したい。
干し柿として食するためにかかる期間は約3週間。この頃には大きかった果実は小さくしぼみ、表皮は乾燥。表皮をむいていくと中からは熟した実が現れる。食してみると甘さと適度な弾力があり、とてもおいしい。手間暇をかけて干し柿にしたかいがあったと感じさせてくれる。
農水省統計(2019年度)によると、栽培面積の第1位は愛媛県(91·6㌶)、第2位は香川県(16·9㌶)、第3位は岡山県(11·3㌶)となっており、瀬戸内で栽培が盛ん。和歌山県の栽培面積は統計上の数値はないが、筆者は産直市場で購入。わずかと思われるが、県内でも栽培が行われている。
昔ながらの方法で脱渋し、おいしく味わえる愛宕柿。手間はかかるがお薦めの逸品である。
(次田尚弘/和歌山市)