目が離せない和歌山生まれの柿

これまで、伊都地方が誇る和歌山の柿と題し、県内で収穫される代表的な柿を13種類紹介した。今週は、これらの柿の魅力を振り返りたい。
柿シーズンの始まりを告げるのが「刀根早生柿(とねわせがき)」。9月下旬から10月上旬頃に収穫され、脱渋後に市場に出回る品種である。全国で収穫される刀根早生柿の半数以上が県内で栽培されることから目にすることが多く、秋の訪れを感じさせてくれる。
このコーナーで特に読者の皆さまにお伝えしたかったのが、和歌山県で生まれた品種の存在。平核無柿を樹上で脱渋した「紀の川柿(きのかわがき)」や、かつらぎ町で発見された「溝端早生柿(みぞばたわせがき)」、2020年に出荷を開始した「紀州てまり」など。
溝端早生柿や紀州てまりは400㌘を超える大きなサイズが特徴で、見栄え、味が良く、最高級品として扱われる存在。とくに紀州てまりの食感と甘さは格別で、和歌山県を代表する品種として期待したいものである。
これらの新しい品種の登場には、収穫の最盛期である10月上旬に刀根早生柿などの出荷が集中し、価格の下落を招くという背景がある。品種の分散化による出荷時期の平準化を行い、10月中旬以降に市場での競争力が高く、味やサイズに優れた柿を育成したいという思いから、さまざまな工夫が行われている。
和歌山県における柿の収穫量(2019年)は43400㌧。日本一の座を守りながら、持続可能な農業の在り方を追求する中で生まれる新品種は、市場を意識した、柿の新しい価値を発信している。
柿といってもさまざまな種類があり、生まれた背景や渋柿と甘柿の違い、形、味にそれぞれの特徴があり、その中から自分が好きな品種を見つけるのも楽しみの一つ。来シーズンは柿を食べ比べながら季節の移ろいを感じていただきたい。(次田尚弘/和歌山市)