最終盤、激しい綱引き 衆院和歌山1区補選
岸田文雄首相に向けて爆発物が投げられた15日の雑賀崎漁港(和歌山市)の事件以降も、衆院和歌山1区補選(23日投開票)には、接戦が伝えられる自民党と日本維新の会の幹部らが相次いで応援に入り、警戒の中、街頭での訴えを続けている。戦いは最終盤を迎え、まだ投票先を決めていない有権者を引き入れようと激しい綱引きとなる中、20日には自民の萩生田光一政調会長、21日には維新の吉村洋文共同代表がマイクを握った。
候補者は届け出順に、自民元職の門博文候補(57)=公明推薦=、維新新人で元和歌山市議の林佑美候補(41)、共産新人で党県常任委員の国重秀明候補(62)=社民県連支持=、政治家女子新人で党職員の山本貴平候補(48)。
爆発事件翌日の16日以降、要人を迎える自民の屋外での演説会は、厳戒態勢が敷かれるようになった。聴衆のエリアは柵などで囲われ、警察官が金属探知機を手に手荷物検査を行い、周辺には多数の警護要員に加え、警察犬も配置。弁士と聴衆の間は20㍍程度は距離をとり、演台は防弾仕様とみられるシートで覆い、不測の事態に備える。陣営は聴衆との距離感にジレンマを感じているが、警備は最優先事項だ。
20日、南海和歌山市駅前で演説した萩生田氏は「大阪の傀儡(かいらい)の候補を選ぶのか、和歌山のために国会に戻ることを決めた候補を選ぶのか」と、大阪のイメージがある維新を強くけん制。陣営が連呼してきた「和歌山のことは和歌山で決める」とのフレーズがこの日も繰り返され、有権者の愛郷心に訴える戦略を徹底する。
一方の維新は、県内初の国会の議席奪取へ、「党の顔」である吉村氏が15、17日に続き3度にわたり選挙区入り。首相襲撃事件を受け、党関係者に警戒を求める通知はしたが、自民のようなものものしい警備態勢はなく、多くの市民らが街宣車のすぐ近くまで集まり、スマートフォンを向けながら演説に耳を傾ける。
吉村氏は「自民は政治家に近い人の利益を考える政治。維新は次世代の利益を目指す政治。ここが対立軸だ。維新にやらせてほしい。古い自民の政治に一泡吹かせよう」と保守王国での変革を訴え、大阪を意識した自民の批判には、「関西は世界から見れば一つのエリア。和歌山と大阪が連携し、関西を強くしていきたい」と広域連携の視点から反論する。
選挙期間最終日の22日には岸田首相が2度目の和歌山市入りを予定し、維新は馬場伸幸代表が3度目の応援に駆け付ける。情勢はどう傾くのか、最後まで見通せない選挙戦となっている。