ケーキやジャムにも「紅ほっぺ」
前号では、まりひめに次ぐ県オリジナル品種として知られ、香り高く食味に優れた「紀の香」を取り上げた。今週は、全国的に栽培が盛んな「紅(べに)ほっぺ」を紹介したい。
紅ほっぺは、果実が大きく甘味が強く収穫量が多い「章姫(あきひめ)」を母親、果実が硬く甘味と酸味の調和に優れた「さちのか」を父親とする掛け合わせにより生まれた品種。1994年から静岡県の農業試験場で育成され、2002年に品種登録されている。名前は果皮が美しい紅色で果肉の中心まで赤く、ほっぺが落ちるような食味の良さに由来しているという。
果実は大きめで長円すい形をしており、果皮にはつやがある。断面が美しいことからショートケーキやフルーツサンドに使用されることが多い。また、果肉が鮮やかな赤色をしており、甘味と酸味のバランスが良いことから、ジャムにして食べられることも。食してみると、果実はやや硬めで、甘味と酸味が適度なバランスにあり、濃厚な味を楽しむことができる。
シーズンは12月から翌年5月ごろ。春の行楽シーズンである3月から4月ごろに出荷のピークを迎えることから、いちご狩りに最適な品種とされる。1月以降が本格的な収穫期となるため、クリスマスの時期ではサイズにばらつきがあり、この時期の商戦には弱い傾向にある。
主な産地は静岡県であるが、栽培地域を制限しておらず、茨城県や愛知県、九州地方など幅広い地域で栽培。和歌山県内でも栽培されている。
イチゴのシーズンの最後に最盛期を迎える紅ほっぺ。そのまま食べても、いちごミルクにしても、ジャムにしてもおいしくいただける。さまざまな食べ方で、楽しんでいただきたい。
(次田尚弘/和歌山市)