芝居の魅力届けたい 劇団とんこつしょうゆ
新型コロナの影響を大きく受けた舞台芸術の世界。公演中止が続き、世界じゅうで劇場のあかりが消えたこともあった。そんな2021年に和歌山で旗揚げされた劇団「とんこつしょうゆ」が、存在感を増している。コロナ禍も3人のメンバーはじっくりと思いを熟成させ、濃厚な時間を共有してきた。現在は、観客と同じ空間を共有できることの喜びをかみ締めながら、2度目となる6月の公演に向けて稽古を重ねている。
同劇団に所属するのは演出を担当するイナモトトモミさん(31)、俳優の大坪哲也さん(41)、俳優と脚本を担当する峯奈緒香さん(35)の3人。
峯さんは向陽高校の演劇部出身。中学生までは目立つことをするのは恥ずかしいと思っていたが、先輩が舞台で堂々と演じている姿に感動。「見る人に力を与えることができる」と、人前で表現することの素晴らしさを知り、演劇部に入った。大学でも舞台芸術を学び、卒業後は仕事をしながら社会人演劇サークルに所属。そこで意気投合した3人で「今まで演劇を見たことがない人にも、面白さを伝えたい」と結成した。
新型コロナで公演中止が続き、舞台を諦める人も多かったが、3人は対面で稽古ができない中でも、リモートで読み合わせをしながら演劇への思いを語り合った。こんな状況下でも、演劇をやりたい仲間がいる。「劇団をやってみよう、劇団を立ち上げよう」――。思いは固まった。劇団名は、和歌山の地域性と親しみやすさを表そうと「とんこつしょうゆ」に決めた。
22年6月に旗揚げ公演。演目は「星の王子さま」で、「役者が生き生きしている」などと話題となった。
峯さんは「タイトルは知っているけど内容までは分からないという人が多く、初めて演劇にふれるという人にはぴったりだと思った」と言う。また、舞台に立つのは2人のみで密にならず、リモートでも練習しやすい利点があったそう。人数制限のため、70人の客席だったが満員になり、初回公演は大成功を収めた。
今後は劇場での公演以外にも地域のイベントや、子ども、高齢者らの施設で演劇の要素を取り入れたワークショップも開きたいという。
峯さんは「演劇をやりたい人は、やる気のある人ほど東京や大阪に出て行ってしまう。地元でも演劇を楽しめることをアピールし、和歌山の人に広く知られる劇団になりたい」と夢を描く。
2回目の公演は田辺聖子原作の『ジョゼと虎と魚たち』。メンバーに加え、3人の役者が客演する。峯さんは「人との出会いによってハードルを超えていくストーリーで、前向きになれる作品。演劇との刺激的な出合いになってほしい」とPRしている。
公演は6月3日午後5時、4日午後3時から和歌山市新和歌浦の和歌浦芸術区で行う。チケットは前売り1500円、当日2000円。二次元コードか、メールのどちらかで予約が必要。
同劇団は現在3人で活動しているが、同じ思いを持つメンバーを募集中。日曜日の稽古に参加できることが条件。
公演の予約、問い合わせなどはメール(tonkotsushoyu.wakayama@gmail.com)。