農水政務官が視察 「有田みかん」豪雨被害

梅雨前線と台風2号に伴う豪雨被害を受け、藤木眞也農林水産大臣政務官が28日に来県し、有田市内で園地が崩壊したミカン畑の視察や農業関係者らとの意見交換を行い、「早く復旧して仕事をしたいという農家の思いを強く感じた。一日も早い営農再開に取り組んでいきたい」と話した。

今月1~3日の集中豪雨による県内の農林水産業被害は、これまで判明している合計で約72億5000万円に上っている。有田市では24時間雨量が年間平均降雨量の約4分の1に当たる400㍉に達し、県を代表する農産物ブランド「有田みかん」をはじめ、急傾斜地で栽培されているかんきつ類の園地崩壊や流出による被害が大きかった。

藤木政務官は28日午前、有田市の宮原東と下中島で発生した大規模なミカン畑の崩落現場2カ所を視察し、被害状況の説明や復旧に関する要望を受けた。

市内で約4㌶のミカン畑を栽培する澳章弘さん(66)は、宮原東で約5分の1の園地が土砂崩れで被災。本来の水路とは違う位置が谷のようにえぐり取られ、20本程度のミカンの木が流出し、薬剤散布用のパイプラインは寸断された。

「被害を見た時は頭が真っ白になり、自分ではどうしようもないと思った。復旧工事には数千万円かかる見込みだが、ただでさえ農家の経営は苦しい上、とてもそれだけの体力はない」と語り、他の被災農家からも同様の声を聞いているとし、「廃園する農家が出てくることだけは避けてほしい」と国の支援を訴えた。

視察後、藤木政務官はJAありだ箕島支所で、望月良男市長、同JAの森田耕司代表理事組合長ら県、市の関係者、地元農業者らとの意見交換会に出席し、望月市長から要望書を受け取った。

要望書では、早期の営農再開に向けた災害査定や災害復旧事業への配慮、復旧に関する専門的助言や人的派遣などの技術的支援を求めている他、農地・農業用施設の災害復旧事業では近年、入札不調などの事態が相次いでいることから、工事設計に関する抜本的な見直しなど、復旧事業の円滑な執行に対する支援も要望している。

望月市長はあいさつで、「ただ復旧するという無機質なものではなく、何百年と続いてきた地域の農業をどんな思いで続けていくのか、農家に寄り添いながら、より強い農業をつくっていきたい」と述べ、国には現実に合わせた柔軟な対応を求めた。

意見交換会は冒頭を除き非公開で行われ、終了後に報道陣の取材に応じた藤木政務官は、政府が今回の豪雨災害を激甚災害に指定する方針を示し、復旧事業の国庫補助がかさ上げされる見通しであることに言及。「被災現場は急傾斜地であり、できるだけ早い復旧工事の着手が必要だと感じた。現状復旧にこだわらず、改良復旧もしていかなければ、同じ災害が発生することにもつながりかねない」と話し、対応を急ぐ考えを示した。

 

土砂崩れが発生したミカン畑で被災状況の説明を受ける藤木政務官(手前右から2人目)=有田市宮原東=

 

望月市長㊧から災害復旧の要望書を受け取る藤木政務官