南海トラフ備え事前復興計画 和市が素案

和歌山市は8日、南海トラフ巨大地震など大規災害後の早期復旧を目的にした「事前復興計画」の素案をまとめた。「住環境の復興」「産業の復興」「市街地の復興」の3本柱で、取り組むべきことを示している。今後は市民らにパブリックコメントを募り、9月末の完成を目指す。

事前復興計画とは、東日本大震災で、復興計画の決定や復興計画策定に時間を要し、人口流出などの問題が顕在化したことなどから、大規模災害の復興を事前に検討し、発生後の早期復興を目指し取り決めるもの。市では昨年11月から策定会議を開き、内容の検討を重ねてきた。

3回目となったこの日の会議には、尾花正啓市長や関係局長ら39人が出席。復興ビジョンや事前準備をとりまとめた素案について説明し、意見交換した。

事前復興計画は、建物の全壊5万5200棟、半壊4万2600棟、発災翌日の避難者15万300人といった被害想定をもとに、「希望をもち 安心して暮らせる まちの活力の再創生」を基本理念とする。

会議では、各局長が方針を説明。「住環境の復興」については、住まいや暮らしの確保の方針を話し、既存の公営住宅の活用か仮設住宅を建設か、その場合のメリット、デメリットなどの報告があった。

既存の住宅活用では、建設費はかからないが賃料にばらつきがあること、コミュニティーを離れて暮らす被災者の心理的サポートの必要性、仮設住宅では、資材の調達や建設などで一時避難所生活が長期化するなどの意見があった。

「産業の復興」では、塩害を受けた農地の再建支援、「市街地の復興」では、居住エリアの集約化と残地の有効活用などを盛り込む。

尾花市長は「太陽光など、再生エネルギーを各地域で独立させることはできないのか」などと質問。「オフサイトが災害時にはオンサイトになる計画を検討してほしい」と話した。

今後は、同会議の結果を反映した上で、今月中旬から同市ホームページで30日間のパブリックコメントを実施し、9月末の完成を目指す。2024年の1月17日に本案に基づいた訓練を行う予定。

 

素案を確認し意見を交わす職員ら