移民で深い縁 在バンクーバー総領事に聞く
和歌山市とカナダ・リッチモンド市の姉妹都市提携は、ことしで50周年の節目を迎え、コロナ禍で制限を余儀なくされてきた交流の再活発化が期待されている。このほど和歌山市を訪問した在バンクーバー日本領事館の丸山浩平総領事(58)に、リッチモンド市をはじめ同館が担当するブリティッシュ・コロンビア(BC)州と日本との歴史的関係、今後の交流の展望などについて聞いた。
――リッチモンドやバンクーバー周辺は、100年以上前から和歌山をはじめ日本の移民が渡り、日系人が多く暮らしている地域ですね。
バンクーバーを中心とするエリアには約4万人の日系人が暮らし、かつ約3万6000人の在留邦人がいます。
日系人は、次世代への日本語学習や、生け花、茶道、書道などの日本文化への関心をずっと持ちながら維持し、相互協力をしながら暮らすと同時に、カナダ社会の発展に大きく貢献しています。
かつては第1次世界大戦のための従軍など、大変つらい部分も含めてのカナダへの貢献があり、それはカナダ側も受け止めながら、第2次世界大戦の頃の日系人の強制収用などへのお詫びの取り組みも行われています。
――日系社会はどのような活動をしているのでしょうか。
桜の季節には各地でチェリーブロッサムフェスティバル(桜祭り)があり、6月にはリッチモンドで、かつての強制収用を経験したシニア世代の再会の集いという大きなイベントがあり、私も出席しました。
7月初頭には「サーモンフェスティバル」という大きな祭りがあり、出店がたくさん並び、日系人も一般のカナダの人たちも楽しみます。日系の親善団体が出店したり、リッチモンドの日本語学校がブースを出して、カナダの一般の人たちが書道体験をするコーナーをつくったりしています。日常的にはその日本語学校などが活動し、仏教の寺院や武道場もあり、柔道などを学ぶ人がいます。
――カナダ社会は移民をどのように見ているでしょうか。
移民が来ることについてのカナダの世論は、社会の発展のためにプラスになるという、前向きな受け止め方が大きいようです。社会全体として文化は多彩ですし、その中で日本に由来するコミュニティーの方々が存在感を放っています。
リッチモンド市議会議員にはアジア系の方もいますし、バンクーバー市長は香港系、BC州の州議会議長はインド系です。いろんな機関を訪れても、何人かは白人ではないルーツの方が幹部として入っています。それがカナダの魅力、パワーの源泉であり、カナダ独特の在り方を象徴していると感じています。
カナダの方と話をすると、日本にも労働力の不足や人口減少、高齢化など、カナダと同じような問題があるが、日本は移民についてどういうスタンスなのかということは、関心事であるようです。
――和歌山市とリッチモンド市のような長く友好関係がある地域の存在は大切ですね。
本当に大事です。地域間交流は、人のつながり、地元の産業同士のつながり、互いの文化交流、歴史的な背景がある社会的交流など、いろんなものが凝縮していると思います。コロナの間はお互いに画面上でしか会話がしにくい部分がありましたが、和歌山からリッチモンドを含めてカナダに来て、ぜひ直接会っていただきたいですね。
――両国の重要な関係を広く知ってもらう上で、和歌山には理解しやすいベースがあります。
和歌山には、親戚がリッチモンドに行ったとか、そういう関係がある方がいらっしゃるでしょう。ぜひ、和歌山の若い世代も含めて、ご先祖がいた土を実際に踏んでいただきたいですね。あの海の向こうに故郷があるんだなと、今よりも通信手段がなく、交通手段が不便な時代に、ご先祖はどんなことを思ったのかと想像すると、本当にいろんなものが去来し、こみ上げてくる思いがします。それがまた今の新しい時代の交流につながり、エネルギーになればと思います。
【BC州】カナダ南西部に位置する人口約500万人、面積94万4735平方㌔の州。和歌山市や横浜市、釧路市など日本の33自治体が州内都市と姉妹提携している。